本研究遂行のため、甲状腺癌多発転移に対する分子標的薬治療導入を検討している対象症例の集積を試みた。また、本研究の対象患者募集と並行し、甲状腺癌に対する内用療法を実施した患者データを主に二つの観点から次のようにまとめた。 ①前向き研究として、甲状腺癌全摘後の内用療法における甲状腺床の放射性ヨウ素の集積量の検討を行った。甲状腺ホルモン休薬法(内因性TSH刺激)とヒトチロトロピンアルファ法(外因性TSH刺激)の違いによってNIS発現量に影響をおよぼし、結果として集積量に差があるのかを論点として研究を進めた。NIS発現に差異があるとの結論に至り、本研究結果は2022年9月の世界核医学会にて発表した。これによって本研究の基礎データを提供できるとともに、I-131治療薬の最適量や治療前の処置方法に関して言及することができると考える。 ②後ろ向き研究として、多変量解析を用いた甲状腺癌多発肺転移患者の検討を遂行した。本研究においては、特に多発肺転移患者が研究対象となるが、このデータをまとめることで癌細胞のI-131uptakeの程度の確認及び分子標的薬導入に至る場合における集積変化の確認のための基礎データを提供できる。また、予後を調査することで、甲状腺癌多発肺転移患者においての分子標的薬導入の必要性や妥当性を詳細に検討できる。 上述①は論文執筆中であるが、国際学会で発表した内容に関して公表する。②は国内学会に1回発表を行い、論文として公表した。
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