研究課題
核医学治療では、組織吸収線量の推定に応じた投与量の決定による治療効果判定や副作用の予測が重要である。特にα線放出核種による核医学治療はα線の飛程が短く、組織内で一様に分布するまで時間がかかることから、組織内の局在性を反映した分布を正確に測定する必要がある。イメージングは組織内の局在性を評価できる方法として重要であるが、既存のデバイスでは211Atなどのα線放出核種から放出されるα線は直接可視化できない。そのため、腫瘍組織及び正常組織における211At標識化合物の濃度を測定する方法がなく、正確な吸収線量は予測困難であった。そこで、新たに開発されたアルファカメラは、腫瘍組織、正常組織内における211At標識化合物の分布を精密に画像化することができるデバイスとして注目されている。また微弱ではあるが壊変と同時に放出される特性X線(79 keV)を検出することで、SPECT撮像による画像化も可能である。アルファカメラによる画像は精密であるが2次元であり、SPECT画像の空間分解能は十分ではないが生体の3次元全身の画像化が可能である。そこで両画像を融合したモンテカルロシミュレーションにより、細胞など微視的な領域を対象としたマイクロ吸収線量測定と、人体など巨視的な領域を対象としたマクロ吸収線量測定の知見を融合した吸収線量予測法の検討を行った。本年度は、動物実験による211At標識化合物の正常組織の集積をSPECT及びαカメラにより撮像し比較した。さらにそこから得られた標識化合物の滞留時間を測定し、各臓器に対する組織吸収線量を求めた。SPECT/CT画像から得られた情報をもとにモンテカルロシミュレーションを行うための環境構築を行い、今後は放射線挙動を計算することで、組織吸収線量の見積もりを行うための検討を行う予定である。これらの結果は、学会発表を行うとともに論文化を進めている。
2: おおむね順調に進展している
令和3年度は研究計画書に則り、アルファカメラによるα線放出核種標識化合物の組織内分布測定及び定量評価やα線放出核種のSPECT撮像の検討を行った。
異なる2つのイメージングデバイスを用い、それぞれの画像を比較、融合することで両者の特性を生かしたより精密なα線放出核種標識化合物の組織内分布測定及び定量評価が可能となるモンテカルロシミュレーションを行う予定である。
各検討におけるデータ取得が順調に進み、研究成果をまとめ論文執筆や学会発表を優先したため。補足データを取得するための実験による物品費、発表論文の英文校正費、論文掲載料で使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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