研究課題/領域番号 |
21K15844
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
青木 健 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (90819666)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アブスコパル効果 / 放射線治療 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
アブスコパル効果とは放射線治療で照射野外の腫瘍が縮小することで、治療効果に腫瘍免疫が関与すると言われている。本研究は前臨床モデルのHER2陽性乳癌に対するアブスコパル効果を用いた治療法の確立を目的としている。このために最終的にはHER2抗原に対する特異的な免疫が抑制された遺伝子改変マウスでの治療を行うことを目標としている。令和3年度は当初の計画通り、まずは免疫学的に異常のないマウスで実験を行い、アブスコパル効果を誘導するメカニズムを解明するための実験を行った。 予備実験であらかじめ治療効果のあった方法、すなわち放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬の一つである抗PD-1抗体を併用する方法で、無治療群、放射線治療単独群、抗PD-1抗体単独群、放射線治療と抗PD-1抗体併用群の4群に分けて実験を行った。放射線治療単独群の照射野外の腫瘍は無治療群と比較して縮小しており、アブスコパル効果が誘導できたと考えられた。アブスコパル効果誘導時の全身免疫賦活の状態を評価するために各群の脾細胞に存在する腫瘍抗原特異的な細胞障害性T細胞の割合を評価した。腫瘍サイズの縮小はあったものの、放射線治療と抗PD-1抗体の併用治療群でも腫瘍抗原特異的なCD8陽性T細胞の割合は想定よりも低かった。今後、遺伝子改変マウスでも同様の実験を行うためには免疫学的に異常のないマウスではより高い治療縮小効果と抗腫瘍免疫の誘導が必要と考え、治療方法の再検討を行うこととした。抗PD-1抗体の投与時期の変更や他の抗体医薬との併用など行った結果、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を併用し、免疫チェックポイント阻害薬の投与時期を従来よりも早めることでより腫瘍が縮小した。現在、新たな治療法で全身および局所での腫瘍免疫賦活状態を調べる実験を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の治療計画では想定していたよりも抗腫瘍免疫の誘導が弱く、より腫瘍縮小効果の高い治療法の検討に時間を要した。また動物用放射線治療装置のトラブルがあり予定したように実験ができなかったことも要因である
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、全身および腫瘍局所での腫瘍免疫の賦活状態の評価のための実験を継続し、結果の解析を行う。腫瘍抗原特異的なCD8陽性T細胞の誘導が確認できれば、免疫学的に異常のあるマウスでの治療実験を進めていく。また免疫学的に異常のあるマウスでの治療効果が得られれば、アブスコパル効果発現早期の治療効果予測の指標となる画像所見の検討のためのMRI撮影も行っていく。
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