アブスコパル効果とは放射線治療において照射野外の腫瘍が縮小することである。治療効果に腫瘍免疫が関与するとされている。本研究では前臨床モデルのHER2陽性乳癌に対してアブスコパル効果を用いた治療法の確立を目的としている。本年は免疫学的に異常のないマウスに植え付けたHER2陽性腫瘍に対してアブスコパル効果を用いた抗腫瘍効果を確認する実験を行った。 前年度に免疫チェックポイント阻害薬である抗PD1抗体と抗CTLA4抗体を併用することで抗腫瘍効果が高まることを確認していたため、今年度は無治療群、放射線治療単独群、抗PD1抗体と抗CTLA4抗体併用群、放射線治療に抗PD1抗体と抗CTLA4抗体を併用した群の4群に分けて実験を行った。放射線治療単独群の照射野外の腫瘍は無治療群と比較して縮小しており、アブスコパル効果を誘導できたと考えられた。放射線単独群よりも免疫チェックポイント阻害薬群、さらに放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬併用群でより強い抗腫瘍効果が見られた。抗腫瘍効果に腫瘍免疫が関与しているかを評価するため、局所の免疫状態についてはCD8陽性細胞がどれだけ局所に誘導されているか免疫染色を用いて評価した。また全身免疫賦活の状態は脾細胞を用いて腫瘍抗原特異的なCD8陽性T細胞の割合を評価した。抗腫瘍効果が高い群ほど腫瘍抗原特異的CD8陽性T細胞が誘導されていることが確認でき、腫瘍抗原特異的CD8陽性T細胞がアブスコパル効果をもたらした可能性が高いことが考えられた。
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