研究課題/領域番号 |
21K15854
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研究機関 | 秋田県立循環器・脳脊髄センター(研究所) |
研究代表者 |
篠原 祐樹 秋田県立循環器・脳脊髄センター(研究所), 放射線医学研究部, 主任研究員 (60462470)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腰椎ミエログラフィー / CT / MRI / 逐次近似画像再構成 / 仮想単色X線画像 |
研究実績の概要 |
2021年度は、腰椎単純デュアルエネルギーCT(dual energy CT; DECT)からnon-contrast CT myelography(NC-CTM)を作成し、画像再構成法の違いによる硬膜管および神経根の描出能について検討した。 単椎間低侵襲椎弓切除術前の腰椎単純DECTおよび3D-MR myelography(MRM)施行例を対象とした。初めにDECTデータに対する逐次近似画像再構成法(ADMIRE; Siemens社)の強度(3, 4, 5)の違いによる硬膜管-黄色靱帯間および硬膜管-椎間板間のコントラスト雑音比(contrast-to-noise ratio; CNR)を調べた。次に仮想単色X線画像(monoenergetic plus; Mono+, Siemens社)のエネルギーレベル(keV)の違いが硬膜管-黄色靱帯/硬膜管-椎間板各間のCNRに与える影響を調べた。その結果、硬膜管-黄色靱帯/硬膜管-椎間板各間のCNRはADMIREの強度が高い程向上し(ADMIRE=3<4<5)、Mono+未使用のmixed 80/Sn140 kV image(mixed image)で最も高かった。ADMIRE=5のmixed imageより作成したNC-CTM、MRMおよび術中所見の比較を行った所、NC-CTMにおける硬膜管や神経根の走行および圧排所見は、多くの症例で術中所見と一致していた。 腰椎単純DECTより高精度のNC-CTMを得る今回の手法は、今後の深層学習を用いた検討においてground truth(正解)データを構築する際に必要となる。通常の腰椎CTとほぼ同等の被曝線量と撮像時間で、しかも1回の非造影腰椎DECT撮影によりNC-CTMを含む手術支援画像を作成できれば、臨床的には極めて有用な手法となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度の検討では、腰椎の低侵襲椎弓切除術における手術支援画像として、デュアルエネルギーCT(dual energy CT; DECT)を用いたnon-contrast CT myelography(NC-CTM)が有用である可能性を示すことができた。 検討を進めて行く中で、逐次近似画像再構成法(ADMIRE, Siemens社)の強度もDECTの画質に大きな影響を及ぼすことが新たに予想されたため、当初の研究計画に追加して検討することとした。 また、深層学習(deep learning; DL)の技術を用いた検討を行う上で、高い精度のground truth(正解)データを構築することは、極めて重要である。そのためには、作成されたNC-CTMを実際の手術所見と比較することが必要と考え、NC-CTMと3D-MR myelography(MRM)との比較だけでなく、NC-CTMおよびMRMと、執刀医による術中所見との比較も合わせて検討することとした。 さらに、当初は対象を腰部脊柱管狭窄症に限定する予定であったが、腰椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲手術のアプローチ方法も、腰部脊柱管狭窄症と同様であったため、腰椎椎間板ヘルニアの当該椎間も対象に含めることとした。 このように、放射線技師、脊髄脊椎外科医、客員研究員など関係スタッフとの討議を進めていく中で新たな課題が見つかったため、腰椎単純DECTに対する検討を当初の予定より延長して行うこととなった。また術者の視覚評価を加えたことにより、対象が低侵襲椎弓切除の実際の術野となる単椎間病変に限定され、同一患者の他椎間は除外されることとなった。そのため、信頼性のある統計解析を行う上で最低限必要と思われる対象数に到達するのに、予定より時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究成果を受けて、2022年度は深層学習(deep learning; DL)を用いた腰椎デュアルエネルギーCT(dual energy CT; DECT)によるnon-contrast CT myelography(NC-CTM)を生成し、画質評価を行う。 2019年3月以降に当施設で腰部脊柱管狭窄症および腰椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲除圧術が行われ、術前に腰椎単純DECTおよび3D-MR myelography(MRM)を施行した患者の当該単椎間病変を対象とする。2021年度の検討にて最適と考えられた、逐次近似画像再構成法のADMIRE(Siemens社)強度5を適用したmixed 80/Sn140 kV imageを訓練データ、そこから硬膜管と神経根を分離したNC-CTMを教師データとし、U-Net(Ronneberger O, et al. MICCAI 2015,234-241,2015)を用いて硬膜管と神経根の抽出を行う。対象病変より学習・評価を行って畳み込みニューラルネットワークモデルを構築し、硬膜管と神経根の抽出性能を評価する。 研究体制としては引き続き、データ収集、視覚評価、撮像に関しては当施設の脊髄脊椎外科医、放射線技師、放射線科医に、DLの準備など技術面に関しては当施設の放射線医学研究部客員研究員に協力を仰ぐ。研究期間中に新たな課題が生じた場合には関係スタッフと連携して解決に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大の影響で学会参加ができなかったため、出張旅費が不要となった。その費用は深層学習用ワークステーションや画像解析等各種ソフトウェアなどにかかる物品費に充てたが、研究の進捗状況がやや遅れていることもあり、多少の未使用額が生じた。 2022年度は、データ保存用のDVD-Rおよびバックアップ用の外付けハードディスクの購入費や、画像解析ソフトウェアの更新費用に用いる予定である。
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