研究課題
CAR-T細胞療法の標的として、細胞増殖因子である、epidermal growth factor receptor (EGFR)、insulin-like growth factor 1 receptor (IGF1R)、erythropoietin-producing hepatocellular receptor 4 (EphB4)を候補とした。EphB4 CAR-Tは既に当教室で開発していたが、EGFR CAR-TとIGF1R CAR-Tは初めから開発した。EGFR CAR-Tについては、いくつかのリガンド候補からEGFを抗原認識部位としたEGFR CAR-Tが最も抗腫瘍効果があることをin vitro、in vivoの両者で確認した。IGF1R CAR-Tについては、リガンド型IGF1R CAR-Tの抗腫瘍効果はin vitroで確認できたが、in vivoでは証明できなかった。その理由として、IGF1に結合するIGFBPの影響が考えられた。IGFBPが抗原認識部位であるIGF1に結合しないように変異を加えた新規リガンド型IGF1R CAR-Tを開発した。これら3種類のCAR-Tを組み合わせ、がん細胞の不均一性に対応したCAR-T細胞の開発を目指した。まずは、非小細胞肺がん細胞株、卵巣がん細胞株、子宮体癌細胞株、子宮頸がん細胞株におけるEGFR、IGF1R、EphB4の発現を評価した。EGFRは9割の細胞株で高発現を認めた。一方、IGF1R、EphB4については、2割から3割程度の細胞株で発現を認めた。また、EGFRに比べ発現程度は低かった。以上から、EGFR CAR-TをベースとしてIGF1R CAR-TまたはEphB4 CAR-Tを組み合わせたdual-targeting CAR-Tが、広い範囲のがん種を対象にできると考え、開発を行った。
3: やや遅れている
今回の研究では、最低でも2種類のCAR-T細胞を新規に作製する必要がある。進捗が遅れた理由としては、CAR-T細胞の開発に遅れが生じたことが理由だったが、それについてもめどがつきつつある。
当教室で新規に作製した、3種類のCAR-T細胞をベースに、がん細胞の不均一性に最も対応した二重特異性CAR-T細胞の開発を目指す。
前年度までに購入した試薬の範囲内で実験が遂行できたため次年度使用額が生じた。次年度は複数のin vivo実験を計画しており、本年度に比べ多額の研究費が必要になる見込みである。次年度の交付金については主にin vivo試験で使用する予定である。
すべて 2023
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Molecular Therapy - Oncolytics
巻: 31 ページ: 1-14
10.1016/j.omto.2023.100728