研究課題
若手研究
膜融合は、様々な細胞内での生理現象に関わっている。細胞膜同士が融合するためには、それぞれの膜上のSNARE蛋白が複合体を作ることが必要である。複合したSNARE蛋白はNSFによって解離され、次の膜融合でリサイクルされる。本研究では、乳児期発達性てんかん性脳症の患者において同定されたNSF遺伝子の変化に関して、患者iPS細胞等を用いてNSFの働きを解析した。その結果、mTOR経路の異常な亢進やオートファジー障害によって、神経変性が生じている可能性が示唆された。
小児神経学
NSF遺伝子は発達性てんかん性脳症の新規の原因として2019年に報告されたが、その病態背景は明らかにはなっていなかった。今回、NSF遺伝子の変化によって、小胞分泌において膜蛋白リサイクルが障害されていること、mTOR経路の過剰な活性化やオートファジー障害が神経変性に関与していることが示唆された。また、mTOR経路を阻害するラパマイシンが治療薬となる可能性も示唆された。NSF関連発達性てんかん性脳症の病態の一部を明らかにし、治療薬候補を同定したてんにおいて学術的意義があると考えられる。