Lowe症候群およびDent disease-2はいずれもOCRLを責任遺伝子とするX染色体連鎖型の遺伝性疾患であるが、前者は先天性白内障、腎不全、筋力低下、精神運動発達遅滞を呈する一方、後者は低分子蛋白尿などの腎に限局した症状を呈し、両者の臨床的重症度は大きく異なる。本研究においては、同じOCRL遺伝子異常により発症する、全く異なる表現型を示すLowe症候群とDent disease-2の2疾患について、両者の表現型の違いを説明しうる分子生物学的発症機序を世界で初めて明らかにした。 OCRL遺伝子のexon6からはじまるトランスクリプトをクローニングし,このトランスクリプトから2種類の機能性蛋白(isoform)が合成されることがわかった。またこれらの機能性蛋白は5-phosphataseとしての酵素活性を有していた。これらのことから,今回明らかになった2つのisoformのレスキューにより,Dent disease-2では,Lowe症候群に比べて明らかに軽症な表現型を示すことが分かった。この結果はこれまで言われていた仮説を具体的に立証したものである。(Nephrol Dial Transplant. 2022 Jan 25;37(2):262-270.) また同時に、OCRL蛋白強制発現系モデルを用いた機能解析系の確立に成功しており、この機能解析系は病原性の評価に有用である他、今後の治療法開発においても、その効果判定に応用できるものである。
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