研究課題/領域番号 |
21K15879
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
小野 裕之 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (40868866)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 精巣形成不全症候群 (TDS) / 妊娠母体低栄養 / 性分化発症メカニズム |
研究実績の概要 |
Testicular Dysgenesis Syndrome(精巣形成不全症候 以下TDS)仮説は、「停留精巣・尿道下裂・精子形成障害・精巣腫瘍の発症が、環境因子および遺伝的因子に起因する胎生期の精巣形成障害の結果である。」という考え方である。われわれは、マウスにおける実験において、母体への栄養制限が胎仔精巣におけるテストステロン産生低下と成獣精巣における精子数減少を引き起こすことを明らかにしている。この結果は、内環境因子としての胎生期低栄養環境がTDS発症の一因であることを支持するものである。胎仔精巣におけるテストステロン産生酵素遺伝子群の発現量低下には、ライディッヒ細胞のメチル化変動の関与が想定される。本研究では、胎生期低栄養環境によるTDS発症の分子メカニズムとして、母体における葉酸欠乏によるメチル化変動を明らかにするための基礎的研究を行う。本研究の成果は、男性性分化疾患および男性生殖機能障害に対する先制医療としての「妊娠中の適正な葉酸摂取」の確立を大いに期待させるものである。 2021年度の研究においては、妊娠母体の50%栄養制限により子宮内発育不全モデルを作成し、子宮内低栄養環境とライディッヒ細胞のメチル化変動の関係を解析した。ライディッヒ細胞特異的に標識されるAd4BP-EGFPトランスジェニックマウスから、FACSを用いて選択的にライディッヒ細胞を回収し、Post-Bisulfite Adaptor Tagging (PBAT)法により網羅的メチル化解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、2021年度中に、パターン①:妊娠母体の50%栄養制限葉とライディッヒ細胞のメチル化変動の関係、および、パターン②:妊娠母体の葉酸制限とライディッヒ細胞のメチル化変動の関係を解析する計画であった。しかし、パターン①において、コントロール群の妊娠継続率が約60%であったのに対し、50%栄養制限群の妊娠継続率は約30%と非常に低く、十分量のサンプルを得るのに想定以上の時間を要した。そのため、パターン②の葉酸のみの栄養制限実験は2022年度に繰り越すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
パターン②:本実験系では、葉酸のみの制限を行うことで、メチル化変動の主因が葉酸欠乏であるか否かを解析する。葉酸制限の食餌の作成についてはリサーチダイエット社に依頼する。栄養制限の期間、サンプルの採取方法、解析項目については、パターン①の実験系に準ずる。 パターン③:50%カロリー制限下において葉酸を投与する。これにより、パターン①(50%カロリー制限)により生じたパラメータの変動が、葉酸投与により予防可能かどうかを確かめる。葉酸投与量は3あるいは15 mg/kgとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画は、パターン①50%栄養制限実験、パターン②葉酸摂取制限実験、パターン③50%栄養制限下の葉酸補充実験の3パターンによって構成されている。2021年度は栄養制限母体の妊娠継続率の低さから十分なサンプル数が得られなかったため、パターン①を遂行中の段階である。そのため、次年度にパターン②、パターン③を進める計画であり、次年度使用額が生じている。
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