研究課題/領域番号 |
21K15880
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阿部 真也 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (90866013)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新生児黄疸 / 光線療法 / 高照度強化光線療法 / DNA損傷機序 |
研究実績の概要 |
新生児黄疸に対する光線照射のDNA損傷におよぼす影響を調査する目的で、本研究では実際の新生児黄疸症例に対して酸化ストレス動態を検討することを計画している。今年度は、実際の新生児黄疸の症例から得られた血液検査検体の残血清を収集した。現在、その残血清に対して酸化ストレスの計測を行うことを計画している。 新生児黄疸の原因物質であるビリルビンは、血液中ではアルブミンと結合することが知られているが、一部は結合を受けずに遊離ビリルビンとなる。遊離ビリルビンは新生児黄疸においてビリルビン脳症をきたす主要な原因として知られるとともに、その生理活性の高さから酸化ストレス動態に対する影響が指摘されている。遊離ビリルビンは血清総ビリルビンの値のほかに、ビリルビン・アルブミン結合の親和性(以下、bilirubin-albumin binding capacity; BBC)に影響を受ける。我々は新生児黄疸治療としての光線照射がBBCに与える影響を調査する目的で、過去の新生児黄疸症例を対象として後方視的に検討を行った。結果としては、光治療によってBBCは有意に変化すること、また在胎週が若い症例においては光治療により有意にBBCが悪化する(ビリルビンが遊離しやすくなる)ことを示した。このことは、在胎週が若い未熟な新生児において、過剰な光治療が酸化ストレス動態に悪影響をおよぼす可能性があることを示唆していると考える。これらの成果は、2023年のFederation of Asia and Oceania Perinatal Societiesにて発表する予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、動物舎および実験室への立ち入り制限期間が生じたため、一時的に研究活動が停滞した。それに伴って研究室全体としての動物実験計画に遅れが生じている。また、新型コロナウイルス感染拡大により大学病院への患者入院数も減少しており、それによりヒト新生児からの検体収集にも遅延がみられている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の予定に則り新生児モデルマウスの作成、酸化ストレスマーカーおよび8-OHdG測定、サイトカイン測定などを順次実施する。現在、光線療法を行った新生児の血液検査検体の残血清の収集を行っており、ある程度蓄積がえられれば酸化ストレスマーカーおよび8-OHdG測定を実施する。また、高照度での光線療法を行った症例の集積も行っており、これらの症例についても酸化ストレスマーカー等の測定を行うとともに、長期予後の検討もあわせて行っていく予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、動物実験の実施が一時的に停滞した。また、参加予定であった学会が中止、延期となった。研究活動が積極的に再開 できる状態となれば、当初の計画に則り支出する予定である。
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