研究課題/領域番号 |
21K15884
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
釼持 孝博 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (20784713)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動脈管 / 酸素 / bFGF / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
先行研究において申請者は、出生後の酸素分圧の上昇が塩基性線維芽細胞増殖因子(basic Fibroblast Growth Factor; bFGF)の分泌を増加させ、動脈管平滑筋細胞の血管内腔への遊走を促進することで内膜肥厚を形成し、動脈管の器質的閉鎖を促す可能性を見出した。この結果は、新生児医療で主流となっている肺循環障害予防のために酸素投与を制限する管理は、動脈管の器質的閉鎖を阻害する可能性を示している。そこで本研究では、酸素分圧が動脈管の器質的閉鎖に及ぼす作用の分子機序を明らかにすることを目的とした。本年度は胎齢21(正期産相当)のラット胎仔から初代培養を行って得た動脈管平滑筋細胞・大動脈平滑筋細胞を用いて、各々の細胞における酸素分圧上昇による活性酸素量の変化を検討した。活性酸素の指標としてROS産生を検討すべく、試薬CellROXを用いたところ、低酸素状態(酸素濃度 3%)で培養した動脈管平滑筋細胞を大気下(酸素濃度 21%)に置くことでROS産生が上昇するが、大動脈平滑筋細胞ではその変化が生じないということが示唆されたが、値の変動が大きく信頼性に不安が残る結果となった。このため、初代培養後に安定した細胞接着と増殖が確認できた後に直ちに低酸素状態での培養を開始し、クリーンベンチでの各種操作もすべて低酸素状態を保つようにした。さらに3継代までの細胞を使用し、ROS産生はDCF-DA試薬を用いることでROS産生を再現性良く検出することができた。一方で動脈管平滑筋細胞は大動脈平滑筋細胞に比べて増殖速度が遅く、ROS産生はウェルごとのタンパク量で補正する必要があることが明らかとなった。これらの検討から、動脈管平滑筋細胞では大動脈平滑筋細胞に比べて低酸素から大気下環境に変化させたときのROS産生が多いことが示唆された。さらに、その差は少なくとも数時間以上続くことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管平滑筋細胞で出生時を模した酸素分圧の変化が、動脈管においてより多くのROS産生を増加させることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
大動脈平滑筋細胞に比べて動脈管平滑筋細胞でのROS産生が多いことが示されたことから、今年度は、これらがミトコンドリア由来のROSの増加として説明できるかを検討する。さらにROS産生の増加が動脈管特異的にbFGFを増加させるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用した試薬類購入の費用を想定より要さず、また学会への現地参加がなく旅費を要さなかったため。次年度の試薬類購入、学会参加費・旅費にあてて使用する。
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