前年度に施行した血液脳関門モデルにおいて、ビリルビン光学異性体であるルミルビン50μMに血液脳関門透過性を認めたため、引き続き同じモデルを用いて透過性についての実験を行った。前年度と同様にルミルビン低濃度(10μM)、中濃度(25 or 30μM)、高濃度(50μM)、対照として非抱合型ビリルビン(50μM)と計4種のビリルビン光学異性体を0.1% ヒトアルブミン溶液中に調製した。1週齢ラットの脳毛細血管内皮細胞を用いた血液脳関門モデルでは前年度と同様50μM ルミルビンにのみ血液脳関門通過性を認めた。ビリルビン脳症の原因と考えられている非抱合型ビリルビンに脳関門通過性を認めなかったのは安定化のため加えていたアルブミンと強固に結合していたため通過しなかったと考えられた。一方、ルミルビンもアルブミンと結合すると考えられているが、結合が弱いと言われており、そのため高濃度で血液脳関門を通過したと考えられた。今年度は幼若ラットによる血液脳関門通過性の確認に加え、成人ラットの脳毛細血管内皮細胞に置き換えた成人ラットモデルを用いた対照試験を行った。被検体は幼若ラットと同様0.1% ヒトアルブミン溶液中に調製したルミルビン低濃度(10μM)、中濃度( 30μM)、高濃度(50μM)、非抱合型ビリルビン(50μM)と計4種のビリルビン光学異性体とした。成人モデルにおいては全ての溶液において血液脳関門通過性を認めなかった。以上の結果から未熟性を有する血液脳関門においては高濃度のルミルビンの通過性があることがわかった。一方、cell-counting kit(同仁科学研究所)を用いた細胞傷害性試験では前年度に見られた傷害性は今年度の追試験においては認められなかった。これは前年度にはルミルビン精製の際のメタノールが関与していた可能性があると考えられた。
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