研究課題/領域番号 |
21K15892
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
渡邉 昂 川崎医科大学, 医学部, 助教 (60817071)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クラッベ病 / ガラクトシルセラミド / サイコシン仮説 |
研究実績の概要 |
クラッベ病は、ガラクトシルセラミド(GalCer)のリゾ体であるサイコシンの蓄積によって引き起こされる髄鞘形成細胞の細胞死を原因とする脱髄疾患と考えられている。私たちは、サイコシンが蓄積しないクラッベ病モデル(Sap-D KO/Twi)マウスにおいても、クラッベ病モデル(Twi)マウスと同等の脱髄を呈し、寿命が改善しないことを見出した。この結果は、クラッベ病発症の原因はサイコシンの蓄積だけではないことを示している。そこで、クラッベ病発症の新規メカニズムの提唱を目指して、Sap-D KO/Twiマウスの病態解析を行った。 本年度は、以下の2点を解析した。 1.リコンビナント酸性セラミダーゼは本来の基質であるセラミドだけでなく、活性は弱いがGalCerも分解した。また、大腸菌で発現させたリコンビナントサポシンD (Sap-D)は濃度依存的に酸性セラミダーゼ活性を上昇させた。 2.Sap-D KO/Twiマウスのサイコシン量は、中枢神経組織と末梢神経組織の両方で野生型マウスと同程度に減少し、Sap-D KO/Twiマウスの中枢神経組織の脱髄はTwiマウスよりも大幅に改善していた。一方で、末梢神経組織の脱髄は、生後30日前後ではTwiマウスと比べてやや改善していたが、生後38日ではTwiマウスと同程度の脱髄を呈し、グロボイド細胞の浸潤を示した。したがって、Sap-D KO/Twiマウスの病態には、GalCerによるマクロファージの異常活性化が原因と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.サイコシンの産生機構を明らかにするために、GalCerをリコンビナント酸性セラミダーゼとリコンビナントSapDを用いて、分解活性を測定した。その結果、リコンビナント酸性セラミダーゼはセラミドだけでなくGalCerも分解した。また、大腸菌で発現・精製したリコンビナントSapDは濃度依存的に酸性セラミダーゼ活性を上昇させた。 2.SapD KO/Twiマウスの脱髄をTwiマウスと比較した。SapD KO/Twiマウスは、中枢神経と末梢神経の両方でサイコシンがほとんど蓄積しないが、脱髄が進行する。中枢神経の脱髄は、Twiマウスと比べて大幅に改善していた。一方で末梢神経では、生後30日前後ではTwiマウスよりもやや改善していたが、生後38日ではTwiと同様の脱髄、グロボイド細胞の浸潤や神経炎症を呈した。
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今後の研究の推進方策 |
クラッベ病の脱髄や神経炎症は、分解されないGalCerが原因の一つと考えられる。そこで、マウスの骨髄由来のマクロファージにGalCerを添加して炎症性サイトカインの産生を比較する。また、クラッベ病の治療には、骨髄移植などで正常なマクロファージの移植が重要であることを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナウイルス感染対策で、学会がオンライン開催となり学会旅費で使用する予定額が執行できず繰り越した。次年度に物品費として使用する予定である。
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