クラッベ病は、ガラクトシルセラミド(GalCer)分解酵素(GALC)の遺伝子欠損によって引き起こされる脱髄疾患である。クラッベ病では、GALCの基質であるGalCerよりも、そのリゾ体であるサイコシンの蓄積によって髄鞘形成細胞の細胞死が惹起される”サイコシン仮説”によって長い間説明されてきた。これまで、サイコシンはスフィンゴシンにガラクトースが転移される“合成説”と、GalCerが分解される“分解説”が考えられていたが、我々は、酸性セラミダーゼとその活性化タンパク質であるサポシンD(Sap-D)によって、GalCerが分解されてサイコシンが産生されることを組換えタンパク質を用いて明らかにした。Sap-Dを欠損したクラッベ病モデル(Sap-D KO/Twi)マウスは、サイコシンが野生型マウスと同程度あったが、寿命はTwiマウスよりも短くなった。Sap-D KO/Twiマウスの脱髄病変は中枢ではTwiマウスより改善していたが、末梢ではTwiと同等であり、その脱髄領域にはTwiマウスと同様のミエリン様構造物や針様封入体を含む多核化マクロファージ/ミクログリア (グロボイド細胞) の浸潤が見られた。TwiマウスおよびSap-D KO/Twiマウス骨髄由来マクロファージは、C12-GalCerの添加により多核化し、野生型マウスに比べてTNF-αを多く産生した。従って、クラッベ病を悪化させるメカニズムはサイコシンだけでなく、GalCerの関与が強く示唆された。今後は、GalCerによってマクロファージ/ミクログリアを活性化するメカニズムを探索する予定である。
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