研究実績の概要 |
皮質形成異常症を伴う知的障害患者から同定されたヒトRAC3のミスセンス変異(p.G12R, p.F28S, p.P29L, p.P34R, p.A59G, p.G60D, p.Q61L, p.E62K, p.E62del, p.D63N, p.Y64C, p.K116N)の病態解析を実施した。生化学解析の結果、12種類の変異体はすべてGain of Function型(活性型)であることがわかった。次に、マウス in utero エレクトロポレーション法を用いた遺伝子導入技術により、RAC3異常症を模した病態モデルマウスを作成して、神経発達への影響を観察した。その結果、RAC3変異体を発現した神経細胞は、皮質形成時の移動障害を生じ、その後の軸索/樹上突起形成も障害されることがわかった。一方、RAC3変異体を発現した神経細胞では、RAC3→PAK1シグナルの過剰活性化が観察された。さらに、RAC3異常による移動障害、および神経突起形成障害は、PAK1活性を阻害することにより改善されることも示した。すなわち、RAC3遺伝子変異によるRAC3→PAK1シグナルの過剰活性化/制御破綻が、神経細胞の形態制御破綻を引き起こすことで、発達期の皮質構造形成を破綻させることを明らかにし、PAK1はRAC3異常症の治療シーズになりうることを示した。本研究結果は、RAC3遺伝子異常による皮質形成異常症・知的障害発症機構を解明する上で重要な知見となる。
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