研究課題
前年度までに実験用マウス(C57BL/6)にCRISPR-Cas9のゲノム編集技術を用いてAbl1機能獲得型変異のノックインマウスを作成して機能解析研究を試みたが、モデルマウスの生存率が極めて不良であることが判明した。成獣を用いた解析は困難であると判断し、胎児サンプルを用いた解析を計画した。モデルマウス(ヘテロ)から採取した精子を用いて体外受精・胚移植でP19の胎仔サンプルを得た。胎仔の遺伝子型判定を行ったところ、ヘテロの割合は約25%(理論値50%)であり、出生後の先天性心疾患に由来する死亡のみならず、胎生致死の要素があることが示唆された。胎仔サンプルから心臓組織を用いてプロテオーム解析を行ったところ、モデルマウス群で蛋白Aの発現量が著増していることが確認された。蛋白Aは、それを発現する遺伝子Aの機能獲得型変異(自己リン酸化)により先天性心疾患などを呈する症候群の原因となることが知られている。Abl1の機能獲得型変異が蛋白Aの発現亢進を介して様々な先天異常を呈しているという仮説が考えられた。今年度は蛋白Aの下流の評価を行った。仮説通りであれば、下流の蛋白のリン酸化亢進が確認されるはずであるが、結果はむしろリン酸化が抑制されるという仮説と逆の現象が確認されたが、これらの下流蛋白はアポトーシス制御に関わるものであり、ヒトにおけるABL1異常症と表現型的には矛盾がないと考えられた。蛋白Aの著増は、なんらかの機序により下流のリン酸化抑制が生じた結果に引き起こされたフィードバック反応と考えた。上述の如く、サンプルを量産が困難なため、この度、実験用培養細胞を用いてこの現象の検証を行う方針とした。
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International Journal of Cardiology
巻: 396 ページ: 131554~131554
10.1016/j.ijcard.2023.131554