研究課題/領域番号 |
21K15903
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
柴田 敬 岡山大学, 大学病院, 助教 (00769961)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Phase-amplitude coupling / 小児てんかん / 脳波 / ネットワーク解析 / CSWS / エトスクシミド |
研究実績の概要 |
小児てんかんでは脳波で睡眠期に持続性棘徐波(CSWS)を呈する症例は、いわゆるてんかん性脳症と呼ばれる状態となり、認知機能の低下を伴う。本研究では、脳波による脳内のネットワーク解析の手法の一つであるphase-amplitude coupling (PAC)解析と呼ばれる高周波と特定の周波数の徐波との結びつき(カップリング)を評価する脳波分析の手法を用いて、①CSWSに特徴的なカップリングのパターンがあるのか、②カップリングの違いにより、認知機能への影響も異なるのか、③有効な抗てんかん薬の違いにより、カップリングのパターンに差があるのか、といったことを明らかにすることにより、CSWSの病態の解明と、PACがCSWSを示すてんかん性脳症の認知機能障害や治療法選択のためのバイオマーカーとならないか検討することを目的としている。 令和3年度は平成22年から令和2年までの間に、岡山大学病院小児神経科へてんかんの診断・治療を目的に受診した患者情報を確認し、脳波検査において一度でもCSWSの所見を呈した症例を抽出した。全部で74人の候補者が抽出された。 試験的にその中から3例を選択し、抗てんかん薬であるエトスクシミドの使用前後での脳波を用いてPAC解析を行った。エトスクシミド有効例では、使用前から前頭部・前頭極部でPACの指標の一つであるmodulation index (MI)が高く、無効例では多部位と比較して低かった。前頭部・前頭極部でのMIがエトスクシミドの効果が期待できるか否かの指標になるのではないかと推測された。この結果は第54回日本てんかん学会のシンポジウムの中で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日常業務の圧迫により研究に十分な時間が割けていないことと、本研究よりも先行して行っていた研究の遅れにより、本研究にも遅れを来している。
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今後の研究の推進方策 |
診療録を用いて抽出した74例の診療情報を確認し、診断、基礎疾患、使用薬剤やその効果などの情報を収集し、リスト化する。その中からまずはランドクレフナー症候群を含む徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の症例を選択し、各抗てんかん薬に対する反応性(有効であったか否か)で分類する。そしてそれぞれの薬剤の投与前後で代表的な睡眠脳波を切り出し、phase-amplitude coupling (PAC)解析を行う。PACの指標の一つであるmodulation index (MI)を用いて、投与前後のMIを比較し、有効例と非有効例でその変化の違いを検証する。徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の症例で解析ができたら、皮質形成異常やてんかん発症前からの知的発達症の存在など、基礎疾患を有する症例での検討も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れにより本格的な解析に移れていないため、従来使用していたコンピューターで十分であった。次年度以降、解析を進めるにあたり、高機能なパーソナルコンピューターなどの導入を進めていく予定である。 また、コロナ禍であり、オンラインでの学会、会議がほとんどであったため、旅費が必要になることがなかったことも次年度使用額が生じた理由である。
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