研究課題/領域番号 |
21K15904
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
香川 礼子 広島大学, 病院(医), 助教 (40806634)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CARD7 / 機能解析 / TNF-α / IL-6 / IL-8 |
研究実績の概要 |
CARD9欠損症は、CARD9遺伝子の機能喪失型変異により発症する原発性免疫不全症である。90%の症例で侵襲性真菌感染症を発症し、死亡例も散見される。本症患者に対する適切な医療管理のためには、迅速かつ正確な診断が必要である。しかし本症に特異的な検査所見は無いため、通常は臨床所見と遺伝子検査の組み合わせで診断される。本研究では、CARD9変異の病的意義を正確に判断するためのin vitro評価系を開発する。本研究において、侵襲性真菌感染症を発症した本邦初のCARD9新規変異患者を同定した。また、患者細胞におけるCARD9のmRNA、タンパク発現は正常に認めているが、カンジダまたは黒色真菌との共培養で誘導されるTNF-α, IL-6, IL-8の産生が、患者由来末梢血単球で低下していることを示した。これらの結果で、CARD9欠損症において、真菌の構成成分に対する認識機構の障害が示された。CARD9変異の in vitro での機能評価の手法を確立するため、HEK293T細胞を用いた強制発現実験によるCARD9変異タンパクの検討、およびレポーターアッセイによる、変異型CARD9がNF-kB転写活性に及ぼす影響の測定を実施した。これらの結果では、タンパク発現、レポーターアッセイによる評価系では機能障害を明確に示されなかった。次にHEK293T細胞に野生型、変異型CARD9を導入することで誘導される下流の分子群(IL1B, IL6, IL8, CXCL1など)を定量PCRで評価した。また、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を用いてCARD9遺伝子をノックアウトしたTHP-1細胞を作成し、野生型ないし変異型CARD9を一過性強制発現させた。これらに対する真菌刺激での遺伝子群の誘導を定量PCRで測定することを試み、機能解析に適した細胞下部と、解析対象遺伝子の抽出を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
侵襲性真菌感染症を発症した患者で本邦初のCARD9新規変異を同定した。また、患者末梢血とカンジダまたは黒色真菌の構成成分との共培養を行い、TNF-α, IL-6, IL-8の産生を検討し、患者由来末梢血単球で産生が低下していることを示した。次に 機能解析の手法を確立するために、HEK293T細胞を用いた強制発現実験によるCARD9変異タンパク発現の検討、および HEK293T細胞を用いたレポーターアッセイによるNF-kB転写活性の検討を行ない、真菌刺激による機能障害を示すことを試みたが、これらの方法では有意な結果が得られなかった。次に、真菌刺激で誘導される遺伝子群に着目し、NF-kB活性化で誘導される遺伝子(IL1B, IL6, IL8, CXCL1など)の発現をHEK293T細胞を用いて検討した。HEK293T細胞に、野生型または変異型CARD9およびDECTIN-1, SYK, BCL10を一過性強制発現させ、IL1B, IL6, IL8, CXCL1など定量PCRで測定し、その中においてCARD9の機能解析に適した遺伝子の検討を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方法としては、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を用いてCARD9遺伝子をノックアウトしたTHP-1細胞を作成する。このCARD9-null THP-1細胞に、野生型または変異型CARD9を一過性強制発現させ、NF-kB転写活性をLuciferase assay を用いて検討し、HEK293T細胞との比較を行う。またCARD9-null THP-1細胞における、NF-kB活性化で誘導される遺伝子(IL1B, IL6, IL8, CXCL1など)の発現を定量PCRで測定することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
HEK293T細胞を用いた強制発現実験によるCARD9変異タンパク発現、レポーターアッセイによる評価系では機能障害を明確に示されなかった。このため、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を用いてCARD9遺伝子をノックアウトしたTHP-1細胞を作成することを試みている。COVID-19流行の影響により、実験室の使用状況が流動的であり、十分な検討を行うことが困難であった、THP-1細胞の作成を継続し、今後はCARD9-null THP-1細胞に、野生型または変異型CARD9を一過性強制発現させ、NF-kB転写活性をLuciferase aassay を用いて検討する。またCARD9-null THP-1細胞における、NF-kB活性化で誘導される遺伝子(IL1B, IL6, IL8, CXCL1など)の発現を定量PCRで測定することを予定している。
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