研究実績の概要 |
CARD9欠損症は、CARD9遺伝子の機能喪失型変異により発症する常染色体劣性遺伝形式の原発性免疫不全症である。髄膜炎や脳腫瘍などの中枢神経感染症や、腸炎、多発性骨髄炎、眼炎、慢性皮膚粘膜カンジダ感染 (chronic mucocutaneous candidiasis: CMC) などの多彩な症状を呈する。これら重篤な真菌感染症を合併する可能性がある為、本症が疑われれば、迅速かつ適切な診断が必要である。しかし本症の臨床検査所見では、特異的な指標はなく、診断には遺伝学的検査が施行される。遺伝学的検査において、新規変異が同定された場合、その病的意義の評価が必要である。CARD9欠損症は、真菌の構成成分に対する認識機構の障害であるため、それらを示すことが病的評価に有用と考案した。我々は、黒色真菌による侵襲性真菌感染を示した患者を同定し、遺伝学的解析において、CARD9変異【K196E (新規変異) / R373P (既知変異)】を同定した。この新規変異の病的評価を検討するin vitroの評価系を確立することを本研究の目的とした。健常コントロール、患者(K196E/R373P)、患者同胞(無症状)、母(WT/K196E)のCD14+Monocytを用い、LPS, 真菌刺激 を施行。IL-6, IL-8, TNFの産生を検討したところ、患者および無症状同胞では真菌刺激に対してIL-6産生低下を認めたことから、無症状同胞においても真菌刺激に対するサイトカイン産生が低下していることが示唆された。in vitroの評価系として、HEK293細胞に変異を導入し、真菌刺激後のIL-8産生やNF-KB活性を測定したが、新規変異での低下は見られなかった。患者由来の単球系における、IL-6, IL-8, TNFの産生低下が見られれば無症状者においても真菌感染のリスクが想定される。
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