研究課題/領域番号 |
21K15919
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
華井 竜徳 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (40585494)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肝硬変 / 低栄養 / サルコペニア / 栄養療法 / 肥満 / 体組成 / 運動療法 |
研究実績の概要 |
肝硬変診療ガイドライン2020の改定により肝硬変患者における栄養評価および栄養療法の指針が大きく変更された。肝硬変患者の栄養状態を(1)蛋白低栄養、(2)Child-Pugh BまたはC、(3)サルコペニアで評価し、いずれかのリスクがある患者に対して、栄養食事療法・指導を行い、改善が認められない患者に対しては分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤の投与が推奨された。しかし、実臨床におけるこの指針の有用性については明らかではないため、当院の肝硬変患者のデータベースを用いてその有用性について評価をした。結果は蛋白低栄養、Child-Pugh、サルコペニアはそれぞれ生存率低下に関連し、こららのリスク因子を持つ患者に対してBCAA製剤を投与することが生存率改善に寄与することを明らかにした。また近年のエビデンスの蓄積から、肝硬変患者においてサルコペニアの合併はさまざまなアウトカムに負の影響があることが明らかになった。サルコペニアの評価には、CTやMRI画像を用いて骨格筋量を定量化する必要があるが、画像解析ソフトは高価であり、利便性に乏しいため簡易の診断スクリーニング法が求められていた。 SARC-Fはサルコペニアに関連した5つの項目からなる質問票であり、欧米のサルコペニアのスクリーニングに推奨されている。しかし、日本の肝硬変患者に対する有用性は明らかでないため、多施設共同研究を行った。日本の肝疾患に関わる5施設が参加し、717例の慢性肝疾患患者のデータを解析したところ日本においてもSARC-F質問票はサルコペニアのスクリーニング法として有用であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
肝硬変における体組成(サルコペニア)とアウトカム(死亡)の関連について明らかにした。また全国多施設共同研究を行い、サルコペニアのスクリーニング法としてSARC-F質問票が有用であることを確認した。現在、慢性肝疾患患者のデータベースとして、当院および関連施設との連携が確立されたためさらなるデータの集積が可能となった。また参照値としての健常人のデータの集積も、岐阜大学保健管理センターや関連施設の人間ドックの20年近いデータを利用できる環境がほぼ確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
慢性肝疾患患者および健常人の長期によるデータベースを確立し、慢性肝疾患(特に肝硬変)における至適な体組成の検討や低栄養もしくは過栄養(肥満)患者に対する栄養食事療法や運動療法の確立を目指す。特に運動療法においては、肝硬変患者においてその効果や安全性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は臨床研究の準備段階であり、来年度よりデータ収集に向けて本格稼働するため、データ収集のためのPCや体組成計などのデバイス、人件費、諸経費の増加が予想される。従って翌年度への繰り越しが生じた。 また成果発表の為、国内外学会での発表旅費、論文投稿費用が考えられる。
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