目的:Hp未感染胃と除菌後胃に発生した未分化型浸潤癌の臨床病理学的特徴とがんゲノム異常を明らかにする。 方法:2010年1月から2022年8月に当院で切除した胃癌4002例のうち,Hp未感染胃またはHp除菌後胃に発生した未分化型癌で,かつpT1b以深であった30病変を対象とした。Hp未感染未分化型浸潤癌12病変(未感染群),Hp除菌後未分化型浸潤癌18病変(除菌後群)の2群に分け,両群間の患者背景,臨床的病理学的特徴(部位,腫瘍径,肉眼型,色調,組織型,深達度,脈管侵襲)について検討した。解析可能であった未感染群9病変,除菌後群16病変のがんゲノム異常について検討した。がんゲノム異常は癌組織をMSK-IMPACT Clinical Sequencing Cohortに含まれる468の癌関連遺伝子を搭載したパネルにてターゲットシークエンスを施行し,公開データベースをもとに病的バリアントを同定し検討した。 成績:除菌後群は未感染群と比較して,高齢(未感染群vs.除菌後群,43歳 [21-62] vs.70歳 [40-80])で,0-Ⅱc,早期癌の割合が有意に高かった(43% [5/12]vs.78% 16/18],25% [3/12]vs.83% [15/18])。性別,喫煙歴,家族歴,部位,腫瘍径,色調,組織型に差は認められなかった。がんゲノム異常は,CDH1,RHOA,TP53,ZFHX3の病的バリアントを全体の10%以上で認めた。その中で未感染群では除菌後群と比較してCDH1の病的バリアントの頻度が有意に高かった(44.4% [4/9]vs.0% [0/16])。その他の遺伝子の病的バリアントは両群間で有意差を認めなかった。 結論:除菌後未分化型浸潤癌では高齢で0-Ⅱc,T1bの割合が有意に高く,未感染未分化型浸潤癌ではCDH1の病的バリアントの頻度が有意に高かった。
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