研究実績の概要 |
稀少疾患である十二指腸癌(DC)の研究を行うにあたり、十二指腸上皮性腫瘍(DET)について当部門でDETが疑われ前向きにエントリーされた症例を解析した。今回、500例というこれまでに無い多数のDET症例をエントリーできた。これらのうち内視鏡治療を行いDETと病理診断された401例、401病変を解析対象とした。対象症例の内視鏡所見について病変の部位、大きさ、肉眼型、色調、拡大内視鏡所見を病理診断(DCまたは腺腫)毎に比較し、ロジスティック回帰モデルによる多変量解析を行った。その結果、DCは腺腫と比較して有意に十二指腸口側に多く(62.9% vs 46.5%, p<0.05)、病変径が大きく(32 mm vs 16.7 mm, p<0.05)、隆起型(34.3% vs 17.5%, p<0.05)および発赤調(51.4% vs 33.2%, p<0.05)を呈していた。拡大内視鏡所見ではclosedの表面構造(58.6% vs 31.4%、p<0.05)、white opaque substance(WOS)陰性(27.1% vs 13%、p<0.05)、irregular microsurface patternあり(14.3% vs 6.7%、p<0.05)およびirregular microvessel patternあり(25.7% vs 10.6%、p<0.05)がDCで有意に多かった。また、DCと腺腫ではそれぞれの患者背景(年齢、性別、身長、体重、BMI、既往歴、内服薬)に差は認められなかった。多変量解析では、病変径(オッズ比1.9, 95%信頼区間 1.5-2.3)およびWOS陰性(オッズ比 2.8, 95%信頼区間 1.4-5.5)がDCであることと有意に関連していた。DETはDCと腺腫で内視鏡所見が異なり、特に病変径とWOSの有無がDCの診断に重要であった。
|