研究課題/領域番号 |
21K15945
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
新井 慎平 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (70866053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フィブリノゲン / フィブリノゲン蓄積病 / 大量培養 / ローラーボトル / セルスタック |
研究実績の概要 |
FSDはこれまでに8種類のFGG遺伝子変異(G284R、T314P、D316N、H340D、ΔG346-Q350、G366S、T371I、 R375W)・20家系が同定され、日本国内でも2009年にR375Wが1例報告されてた。FSDに関連する研究の多くが症例報告であり、分子生物学的手法を用いて詳細に解析した研究報告はほとんどなく、FSD発症のメカニズムもいまだ不明である。申請者は、これまでにFSD報告のある遺伝子変異を対象にリコンビナントFbg安定発現細胞株を樹立し、それらのFSDモデル細胞を用いてFSDの病態解明に取り組んでいる。 2021年度は、細胞外に分泌されるFbgと小胞体内に蓄積されるFbgの違いを各種機能解析で確認するためにローラーボトルを用いた大量培養に取り組んだ。FSDモデル細胞株は報告症例数の多いG284RとR375W、ならびに申請者の先行研究で判明した細胞内Fbg濃度が高い特徴をもつD316Nの計3種類の遺伝子変異を対象とした。コロナ禍の影響でローラーボトルの納品に時間を要し、9月から大量培養を開始した。10日ごとに培養上清と浮遊細胞の回収を行ったが、予定回収量のおよそ半分時点でローラーボトル装置が故障した。装置の修理対応が困難であったことから、セルスタック(多層培養ディッシュ)での大量培養法に切り替えた。それぞれの培養法で回収した培養上清中のFbg濃度を確認したところ、セルスタックにおけるFbg濃度はローラーボトルの約半分程度を示し、回収効率が低いことが判明した。ローラーボトルで予定していた回収終了時期を2022年4月まで延長し、イムノアフィニティカラムを用いたFbg精製と各種機能解析は2022年度に行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では2021年度は大量培養で回収したリコンビナントFbgの精製と各種機能解析を行う予定であったが、ローラーボトル装置の故障とセルスタックでの大量培養への切り替え等があり、予定回収終了時期を2022年度4月まで延長することとした。。Fbg精製と各種機能解析を行えていないため、2022年度の研究計画と同時進行で実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、小胞体局在性タンパク標識試薬を用いて小胞体に蓄積した異常フィブリノゲン(Fbg)を回収し、Fbgと結合しているタンパクの同定を以下の方法で試みる。 ① 小胞体内Fbgの回収:専用試薬による標識後、細胞破砕液で細胞を溶解する。標識試薬に対するキャプチャー抗体とプロテインAビーズを用いて免疫沈降を行い、小胞体に蓄積しているFbgを回収し、SDS-PAGEを行う。 ② LC-MSによる網羅的解析:SDS-PAGEで分離後の各バンドを切り出しゲル内トリプシン/Lys-C消化にて液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)サンプルを調整する。MS分析を行い、Fbgと結合しているタンパクの同定を行う。 ③ Westernblotting(WB)による個別因子の解析:LC-MS分析で同定したタンパクと先行研究で明らかとなった小胞体ストレス応答の関連タンパク(PERK, XBP1, GRP78)に対する抗体を用いて、WBを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画に遅れが生じ、Fbg精製と各種機能解析に使用する消耗品費が次年度使用額(236,488円)として残った。次年度使用額は当初の計画通り、消耗品費として使用する予定である。
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