研究課題
我々の研究室ではFSD型遺伝子変異を有する異常Fbg安定発現細胞株を樹立し、それらをFSDのモデル細胞として用いて病態解明に取り組んでいる。2023年度は、ケミカルシャペロンの効果で小胞体における異常Fbgの蓄積を軽減できるかどうか研究を行った。小胞体ストレスを軽減する4-PBAとTUDCA、アミロイド様タンパクの凝集抑制効果が報告されているcompound147を培養液に添加し、細胞内封入体(小胞体における異常Fbg蓄積)の変化を蛍光抗体法で確認した。添加濃度や反応日数をいくつかのパターンで検討したものの、いずれのケミカルシャペロンにおいても封入体陽性率が低下するような変化は確認されず異常Fbgの蓄積軽減を示唆するデータを得ることはできなかった。一連の研究期間にて、1)リコンビナント異常Fbgの機能解析(γG284RとγD316N)において、フィブリン重合反応に異常を認めたこと(2021年度)、2)FSDモデル細胞において小胞体ストレス応答に関連したタンパクの検出が確認できないこと(2022年度)を明らかにした。これらの結果ならびに2023年度の結果を踏まえると、FSD型変異において小胞体内に異常Fbgが蓄積する病態は小胞体ストレス応答やアミロイド凝集とは異なる機序が関与している可能性が考えられ、現時点ではFSD型変異を有する異常Fbgにおける機能異常の詳細を明らかにすることが病態解明への鍵であると考えている。FSDモデル細胞から回収できるリコンビナント異常Fbgの濃度が低いために機能解析に必要なFbg量を確保することが困難ではあるが、今後はこの課題を解決しつつ未解析の変異についても機能解析を計画している。
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血管外科
巻: 42巻 ページ: 61-66