NAFLD/NASH患者の臨床像と還元型・酸化型アルブミン及びAOPP量の関連に関する検討について研究期間を通じて計87症例より同意を得て血液検体および体組成に関するデータを得た。これらの症例に対し てAOPP、血清アルブミン量、還元型、酸化型、糖化型アルブミンの比及び絶対量の測定を行った。またNAFLD/NASH患者の臨床像との関連を解析するため生体電気インピーダンス法(BIA法)を用いて筋肉量および体脂肪率を測定した。またCT画像におけるL3レベルの体周囲長、筋肉量、皮下脂肪量、内臓脂肪量について3D画像解析システムを用いて測定した。対象患者のうち臨床上肝硬変と診断した患者は6名であった。筋力および体組成に関する因子の平均値は握力25.0±7.3kg、筋肉量(BIA法) 10.2±2.4kg/m2、体脂肪率(BIA法)23.8±8.6%、筋肉量(CT)47.8±10.4kg/cm2であった。それぞれの因子について相関解析を行ったところ、握力はHMA量(2.35±0.5g/dl)と強い相関(r=0.909)を呈し、L3レベルの筋肉量はAOPPs(186.4±64.2μM)と強い相関(r=-0.721)を、HMA量と中程度の相関(r=0.523)を呈していた。動物実験モデルを対象とした検討については、コリン欠乏高脂肪食(ChD-HFD)マウスを用いて血液の採取および握力測定を行い、NASH単独での評価を行った。ま た、加齢マウスに高脂肪食を8週投与して作成したマウスについてもNASH+サルコペニアモデルとして同様の評価を行った。後者において握力が低い傾向にあった。AOPPsや還元型アルブミンがMASLD/MASH患者に関連したサルコペニア予備軍の早期診断に有用なバイオマーカーであることが示唆された。これらがサルコペニアに関与するメカニズムについて検討が必要である。
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