近年、安全性と忍容性が良好で、肝機能が低下した肝細胞癌症例にも使用できる治療法としてがん免疫療法が注目されており、PD-L1阻害剤とVGEF阻害剤の併用療法において全生存期間の延長が示され、本邦でも一次治療として承認された。さらに有効性の高い治療法を開発することを目的とし、本研究では、複数のサイトカイン刺激により作成した、強力な抗腫瘍効果のあるCytokine Induced Memory Like (CIML) NK細胞と肝癌に高発現し、様々な遺伝子発現の調節に関わるHDAC Class Ⅱaの選択阻害薬の併用療法の抗腫瘍効果を検討した。 健常人の末梢血から分離したNK細胞を複数のサイトカインで16時間刺激することによりCIML NK細胞を作成し、Flow Cytometryを用いて肝癌細胞株に対する細胞障害活性を評価した。IL-2のみで刺激したNK細胞と比較して、CIML NK細胞の肝癌細胞株に対する細胞障害活性は高いことを明らかにした。一方で、選択的HDAC Class Ⅱa阻害薬を48時間暴露した肝癌細胞株に対するCIML NK細胞の細胞障害活性は選択的HDAC Class Ⅱa阻害薬を暴露していない肝癌細胞株に対する細胞障害活性と比較して、高くはならなかった。その要因を検討するため、選択的HDAC Class Ⅱa阻害薬の暴露の有無で肝癌細胞株の遺伝子発現の変化をRNA シークエンスで検討したところ、ULBP1、BAG6、B7-H6などのNK細胞活性化受容体のリガンドとなる遺伝子発現が低下しており、NK細胞の活性化が低下すると考えられた。
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