研究課題/領域番号 |
21K15959
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 秀幸 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (60787810)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膵がん / プレシジョンメディシン / 全エクソン解析 / 個別化治療 / がんゲノム医療 |
研究実績の概要 |
本年度(2022年度)は2019年03月から2022年04月までに慶應義塾大学病院 腫瘍センター ゲノム医療ユニットのがんゲノム外来を受診した浸潤性膵管がん患者54例を対象に、膵がんにおける全エクソン解析手法の標準化(解析に適した検体採取法の評価、マイクロダイセクションを用いた核酸抽出法の評価、reporting項目の設定など)を行い、一般に実臨床での全エクソン解析の実施が困難と考えられる膵がんにおいても、高いシークエンス成功率が得られる全エクソン解析手法(PleSSision-Exome検査)の確立に成功した。また新たに、当院で全身化学療法を実施した膵がん131症例において全エクソン検査を含めたがんゲノムプロファイリング検査の実施の有無が予後の改善に寄与するかどうかを検討する後ろ向き観察研究を開始した。その他、膵がんにおける新規治療法に関する総説を和文誌(林秀幸、奥坂拓志:日本臨牀 2023;81巻増刊号2:474-483)に筆頭著者で報告した。 さらに膵がんと同様に難治癌の代表である胆道がんに関しても遺伝子解析を行い、胆道がんに関しては原発巣と転移巣(リンパ節)の両部位のターゲットシークエンスを実施した結果、両者の遺伝子プロファイルは同じであることを欧米誌に報告した(Yamada T, Nakanishi Y, Hayashi H at al.: HPB 2022;24:1035-1043) 。また胆道がん61例を対象に全エクソン解析を含めたがんゲノムプロファイリング検査を実施し、リアルワールドにおける胆道がんゲノム医療の臨床的有用性を検討する後ろ向き観察研究を行い、胆道がんでは薬物療法の対象となりうるactionable遺伝子異常が75%の症例において検出され、genotype-matched treamentの実施率は25%であったことを第20回日本臨床腫瘍学会学術集会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規症例の集積に難渋しているが、現時点で膵がん54例を対象とした解析が終了しているため。
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今後の研究の推進方策 |
膵がんクリニカルシークエンスにおける全エクソン解析の臨床的有用性を検証する目的で、膵がん患者を対象にターゲットシークエンスと全エクソン解析を同時に施行し、両者の臨床的有用性の比較検討(Actionable遺伝子異常・Germline遺伝子バリアント検出率、治療実施率、Turnaround timeなど)を行う。また膵がん化学療法施行例を対象に全エクソン検査を含めたがんゲノムプロファイリング検査の実施の有無が予後改善に寄与するかどうかを検証する後ろ向き研究を開始しており、同研究結果についても報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例集積に難渋したこと、およびCOVID-19の影響で国際学会での発表機会が得られなかったことが原因として考えられる。今後、追加集積症例のゲノム解析、本研究で得られた成果の国際学会における発表を計画している。
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