研究実績の概要 |
本年度(2023年度)は当院で全身化学療法を実施した膵がん107症例において全エクソン検査を含めたがんゲノムプロファイリング検査の実施の有無が予後の改善に寄与するかどうかを検討する後ろ向き観察研究の結果をまとめ、ESMO2023(欧州臨床腫瘍学会)で発表した。膵癌症例において治療経過中にがんゲノムプロファイリング検査を行った症例は未施行の症例と比べて有意に生存期間を延長しており(29.7ヵ月 vs 13.4ヵ月, HR: 0.51, p= 0.017)、両群の患者背景に差はなかったことから、膵癌においてはがんゲノムプロファイリング結果を把握することが治療医の治療選択に影響を与え、genotype-mathced treatmentの実施の有無に関わらず患者予後の向上に寄与する可能性につき報告した。また、がんゲノムプロファイリング検査を施行した47症例を対象に膵癌におけるがんゲノムプロファイリング検査の至適時期に関する検討を行い、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。膵癌においては一次化学療法施行前にがんゲノムプロファイリング検査を実施した症例が一次化学療法施行後に実施した症例と比べて有意に生存期間を延長しており(40.1ヵ月 vs 24.0ヵ月, HR: 0.33, p= 0.042)、膵癌においては早期にがんゲノムプロファイリング検査を実施することが患者予後の向上に寄与する可能性につき報告した。 その他、腫瘍組織検体のみを用いたがんゲノムプロファイリング検査(T-only検査)において検出されたBRCA1/2遺伝子異常は、どんなにその検出アレル頻度が低い場合であってもGermlin由来のバリアントである可能性があることを英文誌(Hayashi H et al, : Germline BRCA2 variant with low variant allele frequency detected in tumor-only comprehensive genomic profiling. Cancer Sci 2024;115(2):682-686.)に筆頭著者で報告した。
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