研究課題/領域番号 |
21K15960
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大和田 賢 東海大学, 医学部, 助教 (40756409)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アスピリン / 低酸素 |
研究実績の概要 |
古くから鎮痛薬として用いられてきたアスピリンに代表される非ステロイド性抗炎症薬は、大腸がんの発症リスクを低減させることが知られている。横断研究により、アスピリンを毎日服用すると大腸がんの発生リスクは30%減少し、大腸がん死亡リスクも低減することが明らかになった。アスピリンは100年以上の使用実績があり、副作用なども十分に分かっている。近年、アスピリンは抗がん作用を持つ可能性が見いだされ、更なる知見の集積が待たれている。本研究では、大腸がんの様々なステージやそれを取り巻く環境でのアスピリンの薬効を検証することを目的としている。
2021年度は、既存の抗がん剤の効果や放射線療法の効果が減弱することが知られている低酸素環境下での、大腸がん細胞株の生存に及ぼす影響とそのメカニズムの検討を行った。低酸素環境は、低酸素模倣剤である塩化コバルトを用いた。低酸素環境下で、アスピリンは顕著な細胞毒性を発揮した。この時、アポトーシスのマーカーであるPARPとcaspase3の開裂をWestern Blotting法にて観察した。また、アポトーシス阻害剤であるZ-VAD-FMK処理により、アスピリンにより誘導される低酸素環境選択的な細胞毒性は減弱した。従って、アスピリンによる低酸素環境選択的な細胞毒性は、アポトーシスによるものであることが明らかとなった。 現在、どのようなシグナル伝達経路が、アスピリンによる低酸素環境選択的な細胞毒性に寄与するのか、予備的な検討を開始している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から、アスピリンが低酸素環境選択的な細胞毒性を誘導することを明らかにできた。 更に、予備的検討ながら、他臓器由来のがん細胞株でも同様の実験結果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度に引き続き、アスピリンによる低酸素環境選択的な細胞毒性の詳細な分子メカニズムにの解明に取り組む。PI3K/AKT経路やMAPK経路など、細胞の生存を司るシグナル伝達経路の挙動を確認する。更に、細胞死の媒介分子である活性酸素種の関与も検討する。 また、種々の細胞株を用いて、低酸素環境下でのアスピリンの薬効を臓器横断的に明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
試薬の購入にあたり、端数の残金が生じました。 次年度の試薬の購入に充当します。
|