研究課題
胆膵癌34例、良性疾患10例から取得したFFPE組織19検体、細胞診検体61検体の両者より抽出されたDNAをTaqMan RNase P Detection Reagents KitとFFPE DNA QC Assay v2を用いて質的・量的検討を実施し、DNA収量(P = 0.792)、断片化程度(P = 0.800)が同等であることを確認している。Ion AmpliSeq library kit plusを用いライブラリ作製を行い、Ion ChefにてEmulsion PCR、Chipローディングを実施、Ion Protonにてシークエンスを実施した。シークエンスメトリクスは両者同等で解析に足るデータ量が得られた。アノテーションにはOncoKBを用いた。組織検体のある悪性19例について、FFPE組織と細胞診検体の両者より計105個(oncogenic66個、Variant of uncertain significance39個)の遺伝子変異が検出され、50個(47%)が両者で共有されていた。Oncogenic mutationはVUSよりも高度に共有されており(P = 0.024)、共有されているoncogenic mutationの変異アレル頻度はFFPE単独(P = 0.001)、細胞診検体単独(P = 0.004)よりも有意に高値であった。FFPE組織で同定されたoncogenic mutationの73%は細胞診検体でも同定された。組織検体のない25例(悪性15例、良性10例)では、悪性15例の細胞診検体からはoncogenic mutationが29個、VUSが21個検出されたが、良性例はVUS3個のみであった(P < 0.001)。細胞診検体におけるoncogenic mutation検出の感度、特異度、正診率は、それぞれ91%、100%、93%であった。
2: おおむね順調に進展している
全80検体について、DNA抽出、ライブラリ作製、テンプレート調整、シークエンス、アノテーションは完了しており、一部では統計解析済みである。このような経過からおおむね順調に進展していると判断した。
研究計画通り、令和5年度は次世代シークエンサーを用いたゲノム解析結果を精査し、得られた成果を学会発表や論文報告する予定である。今後も継続して症例集積と検体収集を行っていく予定である。また、今回の手法について他検体への活用を検討していく。
本年度は追加検体の収集を中心に業務を施行し、特に病理組織標本の作成を実行した。シークエンスに要するライブラリ作製、半導体チップ、シークエンスに要するキットの消費の割合が低かったため次年度使用額が生じた。次年度以降はより費用のかかるキットの使用や成果報告のための旅費、論文作成費用、雑誌掲載費用が生じるものと推測される。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
Annals of Diagnostic Pathology
巻: 60 ページ: 152016
10.1016/j.anndiagpath.2022.152016
巻: 60 ページ: 152008
10.1016/j.anndiagpath.2022.152008