現在、我が国におけるアルブミン投与は「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン」において適正使用が推奨されており、肝硬変においては難治性腹水の治療や、腹水穿刺排液時のアルブミン投与、肝腎症候群に対する治療としてその使用が推奨されている。その代替として、血漿由来ヒト血清アルブミンに変わる新たなアルブミン補充方法の開発が重要な役割を果たすものと考えられる。その一つとして酵母を宿主として遺伝子組み換え技術を応用して生産された組換えヒト血清アルブミンの開発が行われ、2007年に製造販売承認を取得したが、その後の度重なる品質管理問題などのために現在は広く普及していない。 千葉大学医学部附属病院では2016年より家族性LCAT欠損症を対象としたヒト前脂肪細胞用いた新たな治療法として遺伝子治療臨床研究が厚生労働省より承認を受けており、脂肪細胞の持つ長寿命であること、がん化しにくいことなどから、自家移植治療用の前駆細胞調製に有用な生体組織であることがわかり、目的とするタンパク質の遺伝子を導入することにより、安定した蛋白供給が可能であり、その臨床応用への可能性が期待される先進的な技術である。 そこで、今までのアルブミンを体外から補充する方法ではなく、自らの脂肪細胞を用いて体内でアルブミンを産生させることにより補充するという画期的な手法としてアルブミン遺伝子を導入したヒト前脂肪細胞の自家移植という方法に着目し、本研究の着想に至った。脂肪細胞によるアルブミン産生量については一般的な肝細胞と同程度の産生量を得られれば、一日量としては十分なアルブミン補充が可能であると推察された。その目的のためのアルブミン産生脂肪細胞系統の樹立を目指した。
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