研究課題/領域番号 |
21K15966
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 裕之 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (70829788)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オルガノイド / 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) / 膵臓癌 / 次世代シーケンサー / クロマチン / エピゲノム / ゲノム構造 |
研究実績の概要 |
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は罹患数の割に腫瘍進展経路に関しては不明な点が多い。特に膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)を介する通常型膵癌との発癌経路の差は大きなテーマである。我々はIPMN の多様な消化器臓器系譜を模して進展する生物学的特徴に着目し、細胞系譜を司るエピゲノムにこそその本質を見い出せるのではと仮説立てて検討を行った。 まず、患者由来のIPMNオルガノイドライブラリーを世界に先駆けて樹立することに成功した。樹立したオルガノイドは各々の原発巣の病理像を再現し、IPMN病変に特異的なGNAS 、RNF43 、KLF4 変異を認めることを確認した。 次いでRNA-seq、ATAC-seq の統合解析を行うと、IPMN、IPMN 由来癌に特徴的な遺伝子発現様式・エピゲノム機構があることが示された。すなわち、クロマチン動態と連動して胃型IPMN では胃上皮マーカーの発現が誘導され、IPMN 由来癌では広汎な消化器腺上皮遺伝子が発現していた。これら事象の責任因子として、クロマチン開放部に結合する転写因子を解析することでHNF1Bを見出した。shRNA やCRISPR 干渉実験にて生存への重要性や標的遺伝子群を比較検討することで、HNF1B の重要性はIPMN 系譜に共通かつ特有のものであることを確認した。 さらにIPMN 系譜でのHNF1B 発現を直接支持する因子としてMNX1 を同定した。約160 例の当院のIPMN コホートの免疫染色から、PanIN と比してIPMN 形成過程でMNX1 の発現が有意に上昇し、その後の腫瘍進展に影響している可能性を見出した。(2022 Gastroenterology., PMID:34953915) 本研究成果はIPMNをエピゲノムから解き明かすコンセプトを提唱するものであり、治療最適化に向けた研究の足掛かりになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、クロマチン動態に基づいた膵腫瘍の特徴解明を行うことができ論文として報告することができた。 さらには上記過程から派生して、膵腫瘍の特徴がクロマチンよりも高次のゲノム構造に由来している可能性を見出し、発展的に検討を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の発展事項として、クロマチンやエピゲノムによって構築される高次のゲノム構造に基づく膵腫瘍の特徴形成機構を検討している。概ね順調に進んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在2報目の論文を投稿準備中であり、その費用として次年度使用する。
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