研究課題/領域番号 |
21K15968
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
仁部 洋一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, プロジェクト助教 (30793351)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オートファジー / 腸炎 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患の感受性遺伝子としてオートファジー関連分子が同定され、その病態への深い関与が示唆された。申請者のグループは、飢餓等で起こる従来型オートファジーとは大きく異なる細胞内分解機構として、新規オートファジーを発見した。しかしながら、その制御機構と病態生理学的意義に関しては未だ不明な点が多い。 我々は、新規オートファジーに関わるユビキチンリガーゼとしてTRIM31を同定したが、この欠損マウスではデキストラン硫酸ナトリウム誘導性(DSS)腸炎が増悪することが報告されている。即ち、新規オートファジーの基質残存が、腸炎増悪の原因である可能性が示された。これらの知見に基づき、本研究では、①新規オートファジーの変調から腸炎に至る病態メカニズムの解析②基質の分解促進に伴う腸炎の病態解析を主題とした。 まず、Trim31の欠損が、炎症性腸疾患の病態を反映するか調べるために、リンパ球非依存的に特異的に上昇するマーカーである炎症性腸疾患のマーカーLRG1を解析した。Trim31KO の大腸オルガノイドにおいては、LRG1の発現が強く、Trim31欠損マウスの腸炎がIBDに類似した状態である可能性を示した。このオルガノイドとLRG1というOutputを用いたIBD治療薬剤スクリーニング系への可能性を開くものと考えられる。 次に、Trim31によってユビキチン化され、新規オートファジーによって分解される基質を網羅的に探索する系を作成した。Trim31のN末にユビキチン鎖特異的に会合するTUBEというタンパク質を結合し、FLAG-TAGをつけたFLAG-TrTUBE-Trim31を作成した。今後、これをStableに発現する腸管上皮細胞を作成し、基質を同定する。基質を同定するとともに、この分解を制御する化合物を同定することができれば、炎症性腸疾患の治療薬として有効である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究のプランとして、申請書においては、①ヒト炎症性腸疾患の臨床検体を用いて、基質の蓄積を調べることならびに、②Trim31欠損マウスにおけるDSS腸炎の病態を解析、および③Trim31でユビキチン化され新規オートファジーで分解される基質を同定を提案した。しかしながら、ヒト検体においての解析は現在行えておらず、その点では遅れを有する。ヒト検体における新規オートファジー関連分子等の解析に関しては、検体の治療歴や、病態にばらつきがあり、ある程度の母数があり、かつ、適切で均一な集団を選択することに難渋している。一方で、基質蓄積並びにその認識機構において、同時進行しているプロジェクトが一定の成果を得ており、分子生物学的知見においては、想定以上に進行しているものと考えられる。 ④同定した基質の欠損マウスを作成し、DSS腸炎の病勢が改善するか解析、⑤新規オートファジーを誘導する化合物で腸炎の病勢が改善する、の2目標に関しては、現在新規オートファジー関連遺伝子異常マウスを作成し、より正確に解析が行えるように準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究実績で、基質のユビキチン化不全に伴う炎症性腸疾患の発症・増悪といった一連の病態形成に対して、一つの手がかりを得ることができた。一方、同時進行しているプロジェクトにおいて、ユビキチンによる基質認識と新規オートファジーによる分解を解析している。さらに、超早期発症炎症性腸疾患(VEO-IBD)患者において、新規オートファジー関連遺伝子の変異が報告された。新規オートファジーが不全であり、単球や好中球の異常とサイトカインの分泌亢進が解析によって判明している。本研究の知見をValueとし、蓄積した基質を同定し、その分解を制御することができれば、炎症性腸疾患の新しい治療ターゲットとなることが期待される。 今後、①ヒト炎症性腸疾患の臨床検体を用いて、基質の蓄積を調べる。②同定した基質の欠損マウスを作成し、DSS腸炎の病勢が改善するか解析すると③新規オートファジーを誘導する化合物で腸炎の病勢が改善するか検討いった、臨床検体やVivoでの実験を行うことを考慮している。これに際しては、臨床検体の調整や、標本集団の選定など、分子生物学的な解析を適応するのにより偏りの少ない適切な選択を要する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、国の緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の期間が約8ヶ月を占めた。この期間中、大学においても、新たな実験計画の延期やマウス飼育数の抑制などの要請がなされ、研究活動が制限されていた。そのため、実験のための支出が一定程度抑制された。特に、大学からの指示により、マウスの作成また、凍結卵の個体復元するために確保していた費用も予定より抑えられた。また、これがマウス実験に関する遅れにも関係している。 繰り越した費用は、上記の理由で遅れた計画を補完し、研究計画通りのマウス実験を行う環境を整えるための費用にあてる。
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