研究課題
ネットワーク解析の方法の確立と動物実験では腸内細菌叢に介入を行った解析を行った。まずネットワーク解析の確立には様々な条件でデータを入力して解析方法を確立していく必要がある。まずは慢性肝疾患患者において腸内細菌がどのようなネットワークが作られているかを検討し、慢性肝疾患患者のマイクロバイオームは、非常に複雑なネットワークを形成していることが判明した。その多くの関係が正の相関を示し、一部は負の相関を示すことがわかった。ALT、ビリルビン、血小板などの指標は相関を示さなかったが年齢やアルブミンに基づくALB、Fib4index、PNIは、レンサ球菌やVeillonellaなどの口腔内常在菌と明確な相関を示しました。しかし、Firmicutesを中心とした強い細菌ネットワークとの直接的な相関は見られなかった。さらにHBVとHCVの患者にわけて再現性の評価を行った。多重相関係数を用いることで、複数種類の細菌から線維化メーカーとの関連性が高い細菌を予測することができた。HCV群、HBV群ともにFib4-indexと相関のあるVeillonellaを発見し、HBV群では、9つの細菌がFib4-indexと相関し、そのうち5つはALBIとも相関していた。これにより腸内細菌は、多くの細菌と非常に密接な関係を保持していることが明確になった。これは多くが腸管内自生菌ではなく口腔由来菌が多いことが判明した。今回注目しているストレプトコッカスなどの口腔内常在菌はグラム陽性菌が多いためグラム陽性菌をコントロールすることを目的としてマウスによる動物実験を行った。我々は特定の薬剤を使用することで大腸を中心にした腸管内グラム陽性菌を抑制することができた。しかし線維化は変化せず、むしろ腫瘍の増加に関与する可能性を新たに見出した。
3: やや遅れている
ヒトの検体の収集は比較的順調に進み、ネットワーク解析に関しても解析が進んでいる一方でCovid-19の影響により動物実験はやや遅れている。特にグラム陽性菌をコントロールした際に線維化が変化しなかったことを考慮しさらに実験が必要になると考えられるため若干遅れていると考えられる。
現在も肝疾患患者における腸内細菌叢及び血清BCAAなどの解析などを進めている。筋肉量と肝線維化の関連は徐々に解明されており、肝線維化・筋肉・腸内細菌が複雑に交絡していることが分かった。今回線維化と腸内細菌叢の関連に関してはより明確になったため今後は筋肉量やサルコペニアの条件を追加して解析を進めていく。一方で動物実験は腸内細菌叢による介入により線維化や筋肉に関してはあまり変化がなかった。しかし発癌の抑制を偶発的に発見した。グラム陽性菌の著しい低下を確認することができ、胆汁酸・発癌と関連は細菌叢との関連において注目されており、さらに発展して研究するべき発見である。さらに延長線上で実験を行いこれにより得られた知見を元々の予定の実験に生かしながら進めていく。
Covid-19の影響により動物実験の進捗が遅れてしまい、次年度に繰り越して動物実験を行う予定となっている。また学会参加も困難であったため次年度に繰り越して情報収集と報告を行う予定である。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 3674
10.1038/s41598-022-07810-3