研究課題/領域番号 |
21K15975
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
良原 丈夫 大阪大学, 医学部附属病院, 寄附講座助教 (20814601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳腸相関 / 炎症性腸疾患 |
研究実績の概要 |
本研究は腸炎が腸管局所のみならず全身の特に脳のエネルギー代謝に与える影響について検討することにより、腸管炎症と抑うつ状態の相互作用、脳腸相関のメカニズムについて明らかにすることを目的とした。拘束ストレス負荷によるストレス負荷モデルマウスや中枢神経特異的にミトコンドリア脆弱性をもつマウスに対して腸炎を作成し、両モデルにおける腸炎について評価を行った。また両モデルマウスにおける脳内のエネルギー代謝について全身のATP濃度可視化マウスを用いて検討を行なった。これらのモデルマウスにおける腸内細菌叢や行動実験を行い、ストレス負荷や中枢神経ミトコンドリアの脆弱性が腸炎や行動に及ぼす影響について詳細に解析を行うことで抑うつ状態や不安様行動などの行動異常と腸管炎症の相互作用である脳腸相関の一端を明らかにするために、腸炎モデル・抑うつモデルマウスでの脳ATP濃度の変化、脳腸相関において脳ミトコンドリア・エネルギー代謝異常が果たす役割 、脳ミトコンドリア・エネルギー代謝異常と腸内細菌叢・行動異常について検討を行なっており、現在のところ概ね順調に進捗している。中枢神経系特異的ミトコンドリアに脆弱性を持つマウスは腸炎が強く発現し炎症性サイトカイン発現の上昇を認めたことから、中枢神経系の機能不全によって腸管免疫異常により腸管炎症の増悪をきたしたものと考えられた。現在、中枢神経系による腸管免疫の制御とそれに伴って生じる行動異常について解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸炎マウスやストレス負荷腸炎マウス、中枢神経特異的ミトコンドリア異常マウスにおける中枢神経系での脳ATP濃度の変化の検討を行い、ニューロンにおけるミトコンドリア形態について電子顕微鏡による評価を行なったところ、中枢神経系でのミトコンドリア異常が示唆された。同マウスにおいて脳腸相関の経路である視床下部-下垂体-副腎皮質経路やコリン作動性抗炎症経路について検討し、中枢神経特異的ミトコンドリア異常マウスにおける腸炎においてコリン作動性抗炎症経路の関与が示唆された。また各モデルマウスにおける腸内細菌叢の解析は概ね終了し、行動解析についても現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
腸炎における脳腸相関において関与が示唆されたコリン作動性抗炎症経路について免疫学的な検討を行う。またヒト血液サンプルを用いた同検討を行う予定である。その他、すでに得られているデータの追加実験を行い、本件等の蓋然性を高める実験を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたメタボローム解析が実施できておらず、次年度に繰越を行なった。
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