本研究は腸炎が腸管局所のみならず全身の特に脳のエネルギー代謝に与える影響について検討することにより、腸管炎症と抑うつ状態の相互作用、脳腸相関のメカニズムについて明らかにすることを目的とした。拘束ストレス負荷によるストレス負荷モデルマウスや中枢神経特異的にミトコンドリア脆弱性をもつマウスに対して腸炎を作成し、両モデルにおける腸炎について評価を行った。また両モデルマウスにおける脳内のエネルギー代謝について全身のATP濃度可視化マウスを用いて検討を行なった。これらのモデルマウスにおける腸内細菌叢や行動実験を行い、ストレス負荷や中枢神経ミトコンドリアの脆弱性が腸炎や行動に及ぼす影響について詳細に解析を行うことで抑うつ状態や不安様行動などの行動異常と腸管炎症の相互作用である脳腸相関の一端を明らかにするために、腸炎モデル・抑うつモデルマウスでの脳ATP濃度の変化、脳腸相関において脳ミトコンドリア・エネルギー代謝異常が果たす役割 、脳ミトコンドリア・エネルギー代謝異常と腸内細菌叢・行動異常について検討を行なった。中枢神経系特異的ミトコンドリアに脆弱性を持つマウスは腸炎が強く発現し炎症性サイトカイン発現の上昇を認めたことから、中枢神経系の機能不全によって腸管免疫異常により腸管炎症の増悪をきたしたものと考えられた。加えて、中枢神経系系特異的ミトコンドリア異常マウスにおける腸炎誘導に伴って生じる行動異常を実施したところ、抑うつ様行動や不安様行動が認められた。
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