研究課題
臓器障害に伴う免疫状態を反映すると報告されている末梢血単核球を用いて、急性肝不全症例における攻撃系免疫応答・抑制系免疫応答それぞれに関わる免疫担当細胞の活性化の指標となるサイトカインや制御因子の遺伝子発現を解析し、患者血清での炎症性サイトカインとともに、肝細胞破壊や内皮細胞障害、血液凝固異常、ALT/LDH比を用いた組織低酸素の程度との関連性を確認した。また肝内での炎症細胞浸潤や類洞血流障害の病態を特徴的づける免疫因子について、肝組織の免疫組織学的解析を行った。Concanavalin A, acetaminophen, TNFα等を投与する急性肝不全モデルマウスを用いて、免疫組織学的染色によるfibrin沈着と類洞血流障害の状態、pimonidazole投与での組織低酸素の状態を評価し、肝障害の程度やLDH上昇との関連を検討した。これらのマウス血清での炎症性サイトカイン測定を行った。LDH上昇や免疫組織学的染色、血清炎症性サイトカイン上昇より、急性肝不全症例における類洞血流障害型はconcanavalin A投与モデルマウスに類似し、非類洞血流障害型はTNFα投与モデルマウスに類似することが明らかとなった。Acetaminophen投与マウスは両者の中間の性格を持つことも明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に従って、肝細胞破壊や内皮細胞障害、血液凝固異常、組織低酸素の程度から急性肝不全症例における類洞血流障害型と非類洞血流障害型の分類と免疫学的変化の特徴を見出し、LDH上昇や免疫組織学的染色、血清炎症性サイトカインの変化からそれぞれに相当するマウスモデルを明らかにした。現在マウスモデルでの病態解明を進めており概ね順調に進捗していると考えられる。
FACSを用いた肝非実質細胞の分取と網羅的遺伝子発現解析による活性化状態の評価を行う。以上よりマウス急性肝不全モデルにおける肝細胞障害と類洞血流障害に対するマクロファージを中心とした炎症細胞の関与を明らかにする。急性肝不全モデルマウスより非実質細胞を採取し、包括的1細胞遺伝子発現解析によりマクロファージを中心とした炎症細胞や類洞内皮細胞などその他の肝臓非実質細胞における遺伝子発現と各細胞種の活性化状態を検討し、パスウェイ解析により炎症細胞間あるいは他の肝臓非実質細胞との細胞間相互作用を探索することで、急性肝不全での新しい情報伝達機構を解明する。また急性肝不全発症に関わると考えられるTNF, IFNの欠損マウスに対し上記薬剤を投与することで、病像の異なる急性肝不全を発症させ、類洞血流障害や組織低酸素の状態を確認するとともに、マクロファージを中心とした炎症細胞浸潤の状態や肝臓非実質細胞間の情報伝達機構への影響を評価する。急性肝不全症例の血清や組織検体を用いてqPCR解析あるいは免疫組織学的染色を行い、関連遺伝子群の発現と血中パラメータあるいは組織学的所見との関連性を検討する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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