前年度までの研究で実臨床の類洞血流障害型の急性肝不全に類似すると考えられるConcanavalin A(ConA)投与モデルマウスで投与1時間後という超早期の時点で特定の細胞集団においてIFNγとTNFαの高発現細胞が存在していることがわかった。同細胞集団を更に詳細に解析すると、このタイミングでのIFNγの主な産生細胞はIInnate lymphoid cell、TNFαの産生細胞はマクロファージと考えられた。細胞間相互作用に着目した解析ではINFγとTNFαが類洞内皮細胞やマクロファージへ作用していることが示唆された。類洞内皮細胞の遺伝子発現を評価するとCD40やTissue Factorの発現が上昇することがわかった。CD40LとCD40に着目して細胞間相互作用の解析を行ったところ、NKT細胞で発現したCD40Lが類洞内皮細胞のCD40と相互作用している可能性が示唆された。in vitroの実験では類洞内皮細胞はINFγ刺激でCD40の発現上昇を示し、更にCD40Lの添加によってTissue Factorの発現上昇を示した。以上の実験からConA刺激によってIFNγ-CD40-Tissue Factorへと繋がる細胞間相互作用、パスウェイが明らかとなり、このメカニズムによって類洞の微小血栓が惹起され類洞血流障害型の肝障害を発生すると考えられた。実臨床の急性肝不全の病理標本でCD40の発現を評価すると、類洞血流障害型の急性肝不全でCD40陽性の類洞内皮細胞の増加を認め、このConAモデルマウスで明らかとなったメカニズムは実臨床における急性肝不全の病態にも関与していることが推察された。
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