研究実績の概要 |
本研究の目的は、切除不能肝細胞癌に対する新規の分子標的治療薬の開発である。以前より我々は肝細胞癌(HCC)にGPNMBが発現し、その浸潤、転移に影響を与えていることを明らかにしたが、そのメカニズムは未だ不明である。一方でGPNMBはマクロファージ、樹状細胞にも発現し、免疫抑制的に作用することも報告されている。我々は、GPNMB変異マウスを用いて、がん微小環境においてGPNMBが与えている影響について検討した。前年度はDENを用いた自然発癌モデルを試みたが死亡率が高く、中止し、今年度はC57BL6を背景とした野生型(WT)およびGPNMB変異型(R150X)マウスを用いて、マウス肝癌細胞であるHepa1-6(2×106 cells/mouse)を脾臓に注射する肝転移モデルを作成し、死亡率も低く、評価可能なモデルを確立した。結果としては、WTに比し、R150Xでは肝組織における腫瘍面積が有意に縮小していた(WT vs R150X 5.635% vs 1.200%, p = 0.0456)。CD3+CD4+T細胞(22.2% vs 23.0%)、CD3+CD8+T細胞(40.9% vs 44.1%)に差はなかったが、WTに比し、R150XでCD3+CD4+T細胞はT-bet+が増加し(31.0% vs 66.8%)、Foxp3+が低下した(49.6% vs 39.5%)。CD3+CD8+細胞はPD-1発現が低下し(89.5% vs 73.3%)、CD68+マクロファージはPD-L1発現が低下していた(58.6% vs 39.2%)。以上の結果から、GPNMBは、がん微小環境において浸潤するCD4+T細胞を制御性T細胞に誘導し、CD8+T細胞のPD-1発現ならびにCD68+マクロファージのPD-L1発現が亢進し、癌の発育に対して促進的に作用している可能性が示唆された。
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