研究実績の概要 |
我々は以前よりGPNMBという糖タンパクに着目し、肝細胞癌の浸潤、転移に影響を与えていることを明らかにした。一方でGPNMBはマクロファージ、樹状細胞にも発現し、免疫にも重要な役割を果たしていることが報告されている。今回我々は、癌微小環境においてGPNMBが免疫細胞に与える影響について解析し、新規免疫療法の標的分子となりうるか検証した。 C57BL6を背景とした野生型(WT)およびGPNMB変異型(R150X)マウスを用いて、マウス肝癌細胞であるHepa1-6を脾臓に注射する肝転移モデルを作成し、投与後14日目に評価した。検討項目として、1)肝組織における腫瘍面積、2)肝組織中から単核細胞単離後、CD68+マクロファージ、CD4+T細胞、CD8+T細胞の細胞数、3)CD68+マクロファージのPD-L1発現、CD4+またはCD8+T細胞の表現型について解析した。 1)WTに比し、R150Xでは肝組織における腫瘍面積が有意に縮小していた(WT vs R150X 5.635% vs 1.200%, p = 0.0456)。2)WTに比し、R150Xでは肝組織中から単離した単核細胞数、CD68+マクロファージ、CD8+T細胞は有意に減少していたが、CD4+T細胞は差がなかった。3)WTに比し、R150XではCD68+マクロファージにおけるPD-L1発現が有意に低下し、CD4+T細胞はT-bet+発現が有意に増加した。一方でCD8+細胞はPD-1発現が有意に低下した。 GPNMBの欠損は、癌微小環境においてCD68+マクロファージのPD-L1発現を低下させ、CD4+Tbet+T細胞の誘導やCD8+T細胞のPD-1発現低下により免疫細胞を抗腫瘍に誘導している可能性が示唆された。したがって、GPNMBは肝細胞癌治療における新規の標的分子となり得る。
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