研究課題/領域番号 |
21K15979
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
神田 真聡 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40796348)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロプロテイン / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
本研究では我々が独自に発見したマイクロプロテインの一つであるMKMP78の大腸癌における分子機構とMKMP78の発現変化が腫瘍細胞の表現系にどのような影響を 与えるかを解析すること、更に臨床検体に於けるMKMP78の発現量を解析し患者予後などへの影響について検討することを目的としている。 令和3年度の検討ではRT-qPCRにおいて、一部の大腸癌細胞株でのMKMP78 mRNAの発現亢進が確認されたが、ウエスタンブロッティング法ではタンパク質が検出できず、大腸癌細胞株におけるMKMP78 mRNAの発現量が低いことに原因があると考えた。 令和4年度ではさらに検出系の工夫を重ね、大腸癌細胞株(Lovo>>BM314)で発現が認められるようになった。Lovoは幹細胞と成熟細胞の混在する細胞株であり、どちらの細胞に発現が優位であるかなどについて蛍光抗体法・フローサイトメトリーなどにより確認を進めている。また令和3年度に施行したPRISMAを用いた結合分子のスクリーニング研究をさらに進めたところ、RNA結合蛋白との結合だけではなく、IL-12シグナル経路のタンパクとの関与も示唆された。一般にはIL-12シグナルは腫瘍免疫を活性化することにより大腸癌の生存には不利に働くとされる。そのため、PRISMAの結果から得られた結合分子の候補がどのように大腸癌に関与するのかについてさらなる検討が必要である。 また、ヒト大腸癌検体におけるMKMP78の発現について検討を行ったところ、大腸腺腫・高文化型腺癌ではMKMP78の発現は低下しており、低分化型腺癌ではMKMP78の発現が亢進する傾向にあった。大腸癌の分化度とMKMP78の発現が関係している可能性があり、次年度さらに検討を進めていく方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績の概要に記載した通り、昨年度より大腸癌細胞株におけるMKMP78蛋白の発現解析スクリーニングが想定したとおりにうまくいかず、確認作業に想定よりも遥かに長 い時間を要しているが、昨年度検出不可能であったMKMP78の検出が可能となり、今後進捗が改善していくことが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
MKMP78陽性大腸癌細胞株Lovoをもちいて、MKMP78の大腸癌におけるMKMP78の細胞内分布や分子機構の検討を進めていく。スクリーニングをもとに得られた結合分子を介したMKMP78とIL-12シグナルの関係を、共免疫沈降などをもちいて明らかにしていく。ヒト大腸癌検体における症例数をさらに増やしていき、組織型だけではなく臨床的予後との関連などについてさらに明らかにしていく。 また本研究をドイツの共同研究機関とともに推進する共同研究課題として位置づけ重点的に研究を進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗が予定よりも遅延したため、予定していたよりも消耗品による物品購入が進まなかった。次年度の最終年度の研究計画の遅延を挽回できるようエフォートを強化して研究推進をはかりたい。残余は次年度の消耗品予算として使用予定である。
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