自己免疫性膵炎(AIP)はIgG4関連疾患(IgG4-RD)の膵特異的表現型である。AIP/IgG4-RDは中高年男性に多いという疫学的特徴を有しており、中高年男性が好む高脂肪食がAIP/IgG4-RDの発症に影響する可能性が考えられるが、高脂肪食による肥満とAIPの関係は不明である。そこで、本研究では高脂肪食による肥満が実験的AIP/IgG4-RDの発症に及ぼす効果の解明を目指した。MRL/MpJマウスにそれぞれ普通食または高脂肪食を8週間摂取させた後、poly (I:C) 0.1mgを週2回合計16回腹腔内注射し、AIPを誘導した。高脂肪食の摂取はAIPの誘導期間も継続した。膵組織の病理学的検討と膵臓における免疫反応の解析、小腸のタイトジャンクションタンパク質(TJP)mRNAの発現解析を行った。高脂肪食を摂取したマウスでは、普通食を摂取したマウスと比べ、肝内脂質と体重が著明に増加しており、高脂肪食による肥満を誘導することができた。病理学的検討から、高脂肪食による肥満がAIPを悪化させることが判明した。高脂肪食による肥満は膵臓における形質細胞様樹状細胞(pDC)を活性化し、pDCの産生するI型IFN・IL-33の発現量は普通食摂取と比べて著明に増加した。I型IFN経路の中和により、高脂肪食摂取によるAIPの悪化は抑制された。その一方で、高脂肪食の摂取は、IgG4-RDの好発臓器である唾液腺炎の重症度を変化させなかった。高脂肪食による肥満はLeaky Gutを誘導し、全身臓器の炎症を悪化させることが知られているが、今回の検討では腸管TJPの発現に有意な変化は認めなかった。以上の結果から、高脂肪食摂取が膵臓におけるpDCの活性化を誘導し、I型IFNの産生を亢進することによりAIPを悪化させることが判明した。高脂肪食摂取による肥満がAIPの危険因子として働く可能性が示された。
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