非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は極めて有病率の高い生活習慣病の1つであるが、未だ有効な薬物療法がなく新たな創薬につながる病態解明が望まれる。エネルギー代謝を担う遺伝子発現制御にはエピジェネティック修飾機構の関与が知られるが、本研究は過剰なエネルギー供給にさらされた肝細胞におけるエピゲノム状態の変化に着目したNAFLDの病態解明を目指すものである。高脂肪食を摂取した野生型マウスとG9a肝細胞特異的ノックアウトマウス(G9a KO)の比較から、2022年度は下記のことを明らかにした。
1) G9aKOでは高脂肪食摂取にもかかわらず体重増加が抑制され、肝脂肪蓄積が抑制された。肝炎症や耐糖能、インスリン感受性の増悪も見られなかった。マウスの個体数を増やして検証したが昨年度と同様の傾向が確認された。 2) マウス肝サンプルを用いた網羅的遺伝子解析を実施、G9aKOマウスに高脂肪食摂取した時にだけ発現が大きく変化する遺伝子群に着目して解析をした結果、PPAR・LXR・RXRシグナル関連遺伝子発現が変動していた。 3) PPAR下流で発現調整され、かつ肝への脂肪酸取り込みに関与するCD36がG9aKO+高脂肪食摂取時に発現上昇が抑制されており、G9aKOでの脂肪肝抑制に関与している可能性が示唆された。
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