研究課題
本年度は当初研究計画に従い「大腸粘膜構成細胞群におけるシングルセル遺伝子解析系の構築」および「潰瘍性大腸炎病変部における『IL-12/23サイトカイン・ネットワーク』構成細胞群の解析」及び「IL-12/23抗体製剤投与による粘膜構成細胞群応等・細胞間連関の解析」について研究を実施した。その結果、以下の様な成果を得ている。1.シングルセル遺伝子解析系を大腸粘膜構成細胞群において可能とするため、まず潰瘍性大腸炎(UC)患者由来の大腸オルガノイド、およびクローン病(CD)患者由来の大腸オルガノイドの初代培養を樹立した。この培養腸管上皮細胞を用いて、マイクロ流路系とMultiplexPCR法によるシングルセル解析の条件検討を行った。この結果、当研究室で確立した手法、つまり小腸オルガノイドを用いた既報(J Gastroenterol)とほぼ同じ条件にてシングルセルレベルの細胞分離、RNAの抽出及び逆転写反応が実施できた。既知の腸上皮幹細胞に関する10遺伝子について検討を行い、いずれも小腸オルガノイドと同等の遺伝子発現データを得ることができた。2.次に、このシングルセル遺伝子発現データについて主成分解析を行ったところ、大腸オルガノイドのUCとCDの間には明らかな差異は認めなかった。同一患者由来の小腸オルガノイド(n=6)と大腸オルガノイド(n=5)の間には異なる分布を認め、上皮細胞の採取部位による差異を検出することが確認された。3.IL-12/23抗体製剤投与を行なった対象患者について、内視鏡検査を行なって疾患活動性に関する臨床的な評価(内視鏡スコアリング)を行い、同時に生検組織の採取を行なって、同様に疾患活動性に関する病理学的評価を行なった。以上の結果より、大腸粘膜構成細胞群におけるシングルセル遺伝子解析系を構築し、これに基づく細胞特性の違いを示すことが可能であることが明らかとなった。また、対象となる患者の臨床的評価が可能であることも確認された。
2: おおむね順調に進展している
大腸粘膜構成細胞群におけるシングルセル遺伝子解析系の構築と対象患者における情報収集が進行中である。当初の計画に沿って進捗していると考えている。
本年度計画は概ね順調に推移しているため、当初計画に沿って、次年度以降は対象患者由来の検体を用いた解析の継続、ならびにin vitroモデルの構築と検証、治療効果予測因子・効果判定因子の探索について解析を進めていく計画である。
当該年度は、大腸粘膜構成細胞群におけるシングルセル遺伝子解析系の構築と対象患者における情報収集を行なった。これを元に、次年度以降は対象患者由来の検体を用いた解析を幅広く行う予定であり、かつ、in vitroモデルの構築と検証も並行して行う予定であるため、次年度使用額は必然的に大きくなると考えられる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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