研究課題/領域番号 |
21K15993
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邉 雄介 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (00883844)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ACLF / Navitoclax / SASP |
研究実績の概要 |
【目的】慢性肝不全急性増悪(ACLF)は致死率の高い予後不良な疾患である。ACLFに対する根治治療としては肝移植があるが、移植治療だけでは救命率が改善せず、新規治療開発が望まれる状況である。ACLFの機序には肝細胞老化の関与が示唆されており、老化細胞を除去する薬剤であるNavitoclaxを用いて、ACLFの新規治療を基盤研究の面から模索した。 【方法】In vitroでは、放射線照射で作成した老化肝細胞に、Navitoclaxを添加し、老化肝細胞が減少するか検証した。In vivoでは、四塩化炭素とリポポリサッカライドで作成したACLFマウスに、Navitoclaxを経口投与して、肝胆道系酵素、肝老化細胞数、肝細胞分裂数、炎症性サイトカイン(Senescence-associate secretaly phenotype; SASP)の変化を計測した。 【結果】In vitroでは、Navitoclax添加後に老化肝細胞は36.3%減少した。また、老化に関連したp21とSASP因子のmRNAレベルの低下を認めた。さらにNavitoclax添加でp21陽性細胞は減少し、細胞分裂数(Ki-67陽性細胞)は増加していた。In vivoでは、Navitoclax投与で肝酵素の低下、肝臓内の老化細胞の73.4%の減少、肝細胞分裂数の55.2%の増加を認めた。さらにNavitoclax投与軍では、p21と肝臓内のSASP因子であるIL-1β・IL-6のmRNAレベル低下を認めた。 【結論】In vitro、In vivoの両面から、Navitoclaxが肝老化細胞を除去し、ACLF治療に貢献する可能性があると示した。介在する機序をさらに検証し、新規治療開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性肝不全急性増悪(ACLF)に対する老化細胞除去治療の基盤研究について、当該年度は老化細胞除去薬であるNavitoclaxの肝細胞に対する効果と、ACLFモデルマウスに対する効果を検証することを目標とした。 当該年度はに計画した事象についてはおおむね検証を行い、結果を得ることに成功したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究により、慢性肝不全急性増悪(ACLF)に対して老化細胞除去薬であるNavitoclaxの効果をIn vitro、In vivoの両面から明らかにした。今後の課題として、ACLFに対してNavitoclaxが効果を示したメカニズムを解明することである。老化細胞除去した結果、肝臓がどのような機序で改善し、最終的にACLFの改善につながるのかをSASP因子などの関与を考慮にいれながら明らかにする。また、ACLFにはミトコンドリア機能障害の関与の可能性があり、Navitoclax投与によりミトコンドリア機能活性がどのようになったのかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス状況下で、遠方への情報収集のための学会参加や、実験計画の遅れが生じたため。
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