研究課題/領域番号 |
21K15996
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹内 文彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 研究員 (20852437)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HBV / cccDNA / In vivo |
研究実績の概要 |
全世界で多数の慢性感染者が報告されているB型肝炎ウイルス(HBV)は、現在までに核酸アナログ製剤などを用いた治療が行われている。しかし、それらの治療を行っても、根本的な完治には至っていない。これは、HBVが感染細胞内で形成する環状DNA(cccDNA)が除去できないからである。 これまでの研究によって、cccDNAを除去するリード化合物としてジクマロールを発見している。このジクマロールはPBSに難溶解であり、投与後に体内で効果的に拡散させるためにはPBSに安定的に溶解する必要性があった。今までの細胞実験によって、DMSOがジクマロールの溶媒として適切であることが分かっていた。しかし、動物実験では高濃度のDMSOが毒性を示すことが示された。この結果を踏まえて、溶媒の検討を行い、低濃度のDMSOと非イオン性界面活性剤を併用することによって、ジクマロールの溶解性を維持しつつ毒性を抑えることが動物実験によって示唆された。 ジクマロールは低感染での高い効果が確認されていたが、低感染の3倍以上の高感染下でのHBVの阻害効果は未解明であった。初代肝細胞を用いて、高感染下でのジクマロールの投与実験を行ったところ、高い阻害効果が示唆された。 そして、ジクマロールを発見した実験系によって、ジクマロールよりも効果の高い化合物が示唆された。この化合物はジクマロールよりも10倍以上低い濃度でも、HBVのcccDNAのみならず、タンパク質の阻害効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の実験結果より、HBVに対するジクマロールの高い阻害効果を、低感染下のみならず、高感染下でも確認することができた。また、動物実験の長期投与実験のための基盤となる、毒性が低く溶解性の高い溶媒の選択ができた。今年度ではジクマロールの効果を確認し、長期投与のための問題点を発見、改善できた。そして、ジクマロールよりも強力な候補化合物が示唆されたことからも本課題は順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ジクマロール及び新たに得られた化合物をHBV感染したマウスに長期投与し、HBV抑制効果およびcccDNAの減少を確認する。可能であれば、核酸アナログとの併用療法も試すことでより強力にHBVを抑制するための方策を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定したHBV感染下での薬剤の長期投与実験の規模が大きくなったことが要因である。ジクマロールだけでなく、新規の候補化合物を動物実験で評価するための試薬及び動物実験のための器具が必要になったからである。
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