HBVに対するジクマロールの阻害効果は、低感染下のみならず高感染下においても確認することができた。そして、HBVのDNA配列がゲノムに挿入されたHBV安定発現株においても阻害効果を確認することができた。しかし、HBV感染したヒト化キメラマウスにジクマロールを低濃度のDMSOと非イオン性界面活性剤を併用した溶媒で投与したが、血清中のHBVタンパク質の減少は確認することができなかった。これは核内で修飾タンパク質によって高度に保護されたcccDNAを阻害するには薬剤の濃度だけでなく期間も重要であると考えられた。また、HBVの増幅が強く、化合物の阻害効果よりも増幅が上回っている時はその効果を確認することが難しいことが考えられた。これらの知見は今後のHBV完治のための阻害薬研究に貢献できると期待できる。 ジクマロールを発見した実験系によって、ジクマロールよりも効果の高い化合物が示唆された。この化合物はジクマロールよりも10倍以上低い濃度でも、HBVのcccDNAのみならず、タンパク質の阻害効果が示唆された。しかし、初代肝細胞を用いた感染実験において、一つの候補化合物は培養液中での安定性が低いことが分かった。現在は残りの化合物候補を評価しており、ジクマロールよりも強力な阻害剤を発見することが期待できる、 また、現在までのHBVに対する阻害化合物のスクリーニングでは、単独での探索が中心であり、核酸アナログ製剤等との併用に関してはあまり評価されていない。今後のスクリーニングでは核酸アナログ製剤や侵入阻害剤との併用療法を前提とした化合物探索が重要であると考える。
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