研究課題/領域番号 |
21K15998
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
塩出 悠登 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10838840)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肝内胆管癌 / TRAF3 / NIK / PTEN / 分化転換 |
研究実績の概要 |
本研究では本年度で以下のことを明らかにした。 まずは、肝細胞から胆管細胞への分化転換の証明、胆管癌の起源細胞の同定について、細胞を用いた実験で以下の2点を明らかにした。(1)肝細胞株ThLE2または肝癌細胞株HepG2を用い、siRNA法を用いてTraf3遺伝子を抑制したときの肝細胞、胆管細胞マーカーがどのように変化するのかを検討した結果、肝細胞でTraf3遺伝子が抑制されると肝細胞マーカーが抑制され、胆管細胞マーカーが増加することが明らかになった。(2)マウスの肝臓から肝オルガノイドを作成し、これに遺伝子操作を加えることで、Pten遺伝子とTraf3遺伝子を欠損した肝オルガノイドを作成することに成功した。また、この両遺伝子を欠損した肝オルガノイドを肝細胞分化させたときの変化を検討した結果、肝細胞マーカーが低下し、胆管細胞マーカーが増加することが明らかになった。次にマウスを用いた実験では以下のことを明らかにした。(1)Cre(-)のマウスに対し、AAVベクターやHTVi法を用いて肝細胞特異的な遺伝子欠損を行い、その表現系を検討した結果、いずれのマウスでも腫瘍性の胆管増殖と肝内胆管癌を認めることがわかった。 次に非古典的NF-kB経路の構成蛋白であるNik遺伝子の胆管癌治療標的としての可能性の検討について、細胞実験で以下の2点を明らかにした。(1)胆管癌細胞株HuCCT1を用い、siRNA法を用いてNik遺伝子を抑制したとき、またはNikの阻害剤を投与したときの細胞増殖能をWST assayまたはIncuCyteで検討した結果、肝内胆管癌細胞株でNikを抑制すると細胞増殖が抑制されることがわかった。(2)胆管癌細胞株HuCCT1を用い、siRNA法を用いてNik遺伝子を抑制したとき、またはNikの阻害剤を投与したときの細胞死/細胞増殖マーカーを検討した結果、肝内胆管癌でNikを抑制すると細胞増殖マーカーは低下するが、細胞死には影響がないということがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19により試薬が予定通り届かない等の障害があったが、予定していた実験計画を変更して可能なものから行うなどした結果、その影響を最小限に留めることが出来、予定していた実験を概ね実施することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
細胞とマウスで得られた本研究結果とヒトの肝内胆管癌との関連性を検討し、最終的には肝内胆管癌の治療に寄与することが重要であると考える。そのために、胆管癌細胞株HuCCT1を免疫不全マウスに移植し、Nik阻害剤を加えたときにXenograftの変化を検討する。また、ヒト胆管癌細胞におけるTraf3遺伝子またはNik遺伝子の役割をヒト臨床検体を用いて明らかにする。 さらに胆管癌の患者検体(凍結組織、パラフィンブロック)を用い、癌部でのTraf3遺伝子またはNik遺伝子の発現や予後との関係を明らかにする。また、肝細胞から胆管細胞への分化転換をさらに詳しく検討するため、Alb-Creマウスが胆管癌を発症する前の段階で肝臓を回収し、肝細胞と間質細胞を分離して単一細胞解析を行うことで、肝細胞から胆管細胞への分化転換が起こっていることを明らかにする。
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