研究実績の概要 |
肝内胆管癌は未だ予後不良な難治癌であるの一つである.これまでに肝内胆管癌に対する大規模なゲノム解析が実施され,新規治療標的分子の同定が進められ てきた.その変異パターンは大腸癌や膵癌などに比較すると複雑だが,その中でもPTEN, PIK3CA, PIK3R1, AKT, LKB1等の,PI3K経路の亢進を導く遺伝子の変異 や増幅を認めるケースは相当数(11.8- 22.2%程度)存在することが報告されている.またTP53は,かつてより癌抑制遺伝子の一つとして広く知らてきたが,肝内胆管癌においても最多変異遺伝子として報告されている.TP53を標的とした薬剤開発は困難を極めてきたが,最近,Tp53欠損腫瘍に対するWee1阻害薬 (Adavosertib)の有用性が報告されている.本研究課題では,新規に創出したPI3K経路亢進・Tp53欠損型肝内胆管癌マウスモデルを用いて,その分子病態を明らかにするとともに,PI3K阻害薬及びWee1阻害薬の臨床応用に向けた基盤研究の実施を目的とした. 2022年度,主に申請者らが新規に創出したPik3ca H1047R変異 + Tp53欠損,及びPten欠損 + Tp53欠損の2系統のPI3K亢進型肝内胆管癌マウスモデル由来三次元オルガノイド細胞株を用いた検討を行なった,いずれの系統も免疫不全マウスへの皮下移植が可能であることを確認するとともに,濃度依存的なPI3K阻害薬による増殖抑制効果を確認した.また,正常胆管由来三次元オルガノイド細胞株と比較した網羅的RNAseq解析の結果,2系統で共通して発現上昇・低下を認める遺伝子群を同定した.現在,その責任性の有無について,詳細の検討を行なっている. また,前年度より実施しているヒト肝内胆管癌培養細胞株における薬剤投与実験,他系統の胆管細胞にCre活性を有するマウスでの交配実験は継続して実施・検討している.
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