研究実績の概要 |
1)二光子顕微鏡を用いたPEAサンプルのホールマウントイメージング 血栓の線維化は二光子顕微鏡ではSHG(第2高調波発生光)技術により、染色ステップ なしで、直接可視化できる。これによって、摘除サンプル全体を俯瞰的に観察し、異なる器 質化ステージ(軽度―高度)の病変を同定し、イメージング、病理解析を行う。さらに、PEAサンプルは血管平滑筋様細胞、血管内皮様細胞・間葉系様細胞、血球系様 細胞など、様々な細胞種から構成されているが、これらの細胞群をisolectinによる血管壁の 描出と同時にそれぞれの細胞マーカー(αSMA, CD34, CD133など)の蛍光標識抗体を用 いて可視化する。これによって、種々の器質化ステージにおいて、どのような細胞群がどの ような局所性をもって、器質化に関わっているのかを可視化、解明する。これにより、既存の盲目的な病理解析では未解明であった、CTEPHにおいて、新鮮血 栓が器質化していく過程の解明につながる可能性が高い。今年度は二光子顕微鏡の故障があり、進めることができなかった。 2)血管老化マウスにおける血栓器質化反応の解析 下大静脈結紮により静脈血栓を形成させる。野生型マウスでは結紮後4日程度から血栓の線維化が始まり、14日目にはほぼ線維化が完成することが知られている。血管老化マウスに おいて、この血栓線維化の速度が野生型マウスより早いことを二光子顕微鏡によるSHG技術 により生体下に明らかにする。病理学的にマッソン染色による線維化の評価でも確認を行う。 また、線維化に先行して、好中球やマクロファージが血栓内に浸潤することも知られている が、血管老化マウスにおいて、より早期におこっていることを病理学的に検証する。これまでの解析結果では、血管老化マウスでは大型の血栓が形成されることが明らかになりつつある。
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